夜汐 | あだちたろうのパラノイアな本棚

あだちたろうのパラノイアな本棚

読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

新選組関連の本だー、と思って読んでみたけどなんかあまり新選組は関係なくて変な本だった…
 
そして、時代小説ではあるけれどファンタジーっぽいっていうか、どう解釈したら良いのだろう、という箇所が多くてどうにも混乱しています。
 
何とも形容しがたい本。
 
主人公は、尊王攘夷とか倒幕とかはどうでもいい人間なんですよね。ヤクザの組同士の争いごとが原因で、江戸から京に逃げていったヤクザの蓮八という男です。
蓮八には、夜汐という名の伝説の殺し屋が差し向けられていて、身を隠すのに当時清河八郎が募って京に向かう浪士組がちょうど良かったんです。
 
蓮八は成り行きでその後、新選組の隊士となります。
 
実は遠目から見ていて、芹沢鴨の豪胆な振る舞いにいたく感じ入り、ついていくならこの人だ!と、宿舎の八木邸を訪ねていったところ、偶然出てきたのが沖田さん。
 
沖田さんたら
またもや
ウェルカムボーイ…
 
(わりとそういう創作物は多い。キャラなんですかね)
 
なので、芹沢鴨に弟子入りしようと思ったのに、意に反して近藤さん土方さん一派に入れられてしまった。
近藤さんはともかく、土方さんはキラキラと純粋に武士に憧れるちょっとあぶないやつ。
沖田さんは、いつも下らない冗談ばかり言っているけど、人を斬りたくてしょうがない、頭イカレたやつ。
(↑あくまでこの小説内での設定です)
 
もともと何の志も持たない蓮八は、新選組という集団がほとほと嫌になり、芹沢鴨が持っていたピストルを盗み出して脱走します。
 
局中法度じゃー
 
というわけで、沖田さんと土方さんが数人の隊士を連れて、脱走した蓮八を追いかけます。
放っておいたら隊員にしめしがつかないとは言え、こんな大物幹部が二人も揃って出動するほどの捕り物じゃないと思うんだがな…
芹沢鴨のピストルを持ってたというのが大きいんかな…
 
蓮八は、まともに街道を行ったら捕まるし関所も通れないので、山の険しい道をひたすら江戸に向かって進みます。
 
逃げる。
逃げる。
逃げる。
 
食物はなくなり、旅支度もない着の身着のままで、そこらへんの草や木の実を食べ、川の水を飲みながら進むサバイバルの状態。
 
そして逃げる最中、蓮八はひたすら考えます。
なんで俺がこんな目に遭わなければならないんだ、と。
両親がいなくて、貧しく惨めだった幼少期とか、
幼馴染みの好きな女の子が、吉原に売られていったこととか、
泥棒やヤクザ家業をやっている時の屈辱的な思い出とか、
新選組の奴ら、あいつらホント頭おかしいだろとか。
 
尊王攘夷だの何だの、くそくらえなんです。
ただ普通に生きて行くだけで、何故こんなに苦しくて辛い。
ずっと、ずーっと、山道を行きながら考え続けるのです。
 
これ
何の話だったっけ?
うーんうーんうーん
 
なんかあんまり「夜汐」のことが出てこないんですけどね、
この殺し屋・夜汐も不思議な存在で、目にも止まらぬ速さで人の首を落とす腕の持ち主なんですけど、とても気まぐれです。自分が気が向いた時にしか殺さないので、彼に会っても見逃してくれることもあります。
そして、彼が近づくと、ターゲットは黒い狼の夢を見るという予兆がある。
 
わたし思ったのですけど…
夜汐は、死神なんじゃないですかね…
神出鬼没だし、得体が知れなくて人間っぽくないんですよ。
 
で、ボサボサの仙人みたいになった蓮八のところへ、なんと夜汐と新選組の両者とも同時到着。
沖田さんがトチ狂ってまして、ちょっとヒャッハーな状態で戦いを挑んできます……
 
この本、沖田さんファンは読まないほうがいいな……
 
ラストがどうなるかは書きませんが、
 
なんだったんだろう…
 
この一言に尽きる小説でした。
でも、山中を逃げる途中の蓮八の思考の独白は、切なくて胸がギュッとなるところがありました。いつの世も、ただの一般民衆は虐げられてばかりで生きていくのが辛いよね。
 
※ギャグっぽく書きましたけど全然ギャグじゃないです!!すごーくまじめな物語です。
 
 
 
 
白土三平先生の訃報が!
 
なんだか今年は大御所がたくさんお亡くなりになっている気がする。
 
カムイ伝は被差別階級の人たちが戦う、暗く重たい物語で途中で挫折しました。(蟹工船を読んだ時の絶望感と似ている)
 
カムイ外伝の方は忍者ものなので好きなのだ!