リチャード・ウィドマークが、3月24日に逝去しました。享年93歳。ハリウッド黄金時代を飾った、残り少ない大物俳優が逝ったと思うと、たまらない寂寥感を感じます…。
ラジオ出演や、ブロードウェイを経て、47年の『 死の接吻』で映画デビュー。冷酷非情な殺し屋を演じて絶賛され、主演ではないのに彼の映画として映画史に刻みました。その後は、そのニヒルなルックスを活かした悪役街道まっしぐら。ハリウッド映画黄金時代に燦然と輝く名悪役の名を欲しいままにします。でも、履歴を見ると、決して悪役が多いわけでもなく、『ノックは無用』のような役もあるんですよね。
それから、役の是非は関係なく、ウィドマークといえばやっぱり西部劇でした。『ワーロック』では、ヘンリー・フォンダ、アンソニー・クインと共演し、一体誰が一番早撃ちか!?などという話題もさらいました。『悪の花園』『ゴーストタウンの決斗』『馬上の二人』『シャイアン』なども忘れられない映画です。そして、『アラモ』では、ナイフ投げの名人ジム・ボウイ役。お付きの人への思いやりなんぞもちらっと見せて、人間味溢れるジム・ボウイは、あの映画の中でも最高に光っていました。『西部開拓史』などのオールスターキャスト映画でも、ピカッと光っていました。その後も、『アルバレス・ケリー』『大西部への道』など、やっぱりウィドマークは永遠の西部劇スターだと思います。
70年代に入ると、刑事物やサスペンスなどで貫禄ある演技を見せるようになります。『刑事マディガン』『ドミノ・ターゲット』『合衆国最後の日』『コーマ』…。『オリエント急行殺人事件』は、私がウィドマークを認識した初期の映画でして、如何にも冷酷そうな大富豪ロチェット役に、被害者ながらも同情出来なかった思いを抱いたものでした。まだ、あの頃は、私自身がウィドマークという人の偉大さを全くわかっていませんでした…。
『スォーム』『カリブの熱い夜』『ルイジアナの夜明け』などにも出演し、91年の『トゥルー・カラーズ』を最後に銀幕から遠ざかっていました。
以前、川本三郎氏と逢坂剛氏の西部劇談義の本を読んだことがあるのですが、お二人とも大好きな西部劇スターとしてウィドマークを挙げ、絶賛しておられました。うちの父も、ウィドマークが大好きで、子供の頃からウィドマークが出てくる西部劇を何の気なしに私も見てきました。それだけに、とても印象深く、愛着のあるスターでした。
ルックスに似合わず、大変な愛妻家であったという話を聞いたこともあります。でも、奥さんが亡くなられてからしばらく失意の日々だったことも。その後再婚されたようですが。
こうやって振り返ってみると、やっぱりウィドマークは、本当に数少なくなったハリウッドの大スターの一人だったという思いがより強くなります。いや、ある意味男優では最後の一人かもしれません。黒いスーツと帽子に身を包んで拳銃を持つ悪役の姿。馬に乗って西部を駆け抜ける西部劇での姿。彼が残した名画の数々は、永遠にファンの心に残ります。心からご冥福をお祈り致します。
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