若実つけ物、根は天瓜粉に
キカラスウリ


ウリ科カラスウリ属のつる草。
山野の林の縁にはえる。
花は白色で、
開花は夏の夜。
雄雌異株。
蛾媒花(がばいか)。
果実は太くて黄熟。
実の佐渡方言はカラスウリ、
カラスズングリ、
カラスビ、
フングリ。
実は食用。
漬物。
実はしもやけの薬。
根のでん粉は天瓜粉(てんかふん)。
食用にもした。
暖地性のカラスウリ(果実赤熟)は佐渡に自生しない。


 

朱赤色の実を、
唐から渡来した朱墨のいろにみたててつけた
唐朱瓜(からしゅうり)がカラスウリの和名になったは中村浩説。
 
赤実をつけるカラスウリは佐渡には野生せず、
黄色の実をつけるキカラスウリが野生しているが、
佐渡では単にカラスウリという。

キカラスウリの開花は夏の夜の8時ごろ。
カール状に内まいていた花びらがほぐれて花開く。
 
花冠の先が白いレースとなり、
糸が扇のように広がる。
強い香りで夜の蛾(が)を誘って受粉する蛾媒花。
青い実はお盆頃からみられる。
長さ10㎝くらいの堕(だ)円体。
 
この実をカラスズングリ(小川)、
カラスビ(相川)、
フンドン(高千)、
フングリ(外海府)と子供たちはよぶ。

ぶらぶら分銅のようにぶらさがっているからフンドンだという。
子供たちは、
実の中をくりぬいて柄をつけヒシャクにしたり、
目・鼻・口を彫って、
中にろうそくをたて、
お化けチョウチンにして夏の闇(やみ)の中で遊んだもんだ。
若い実も食べた。
 
センイがでて硬くならないうちに
味噌(みそ)漬け、
塩づけ、
粕(かす)づけ、
にして食べたがなかなかうまい

と小佐渡の小比叡や赤泊新谷の村人は言う。

また、
しもやけではらした子の手に、
親は実を煮てドロドロしたものを塗って手当をした。
 
根からとれるでんぷんは食用にされた。
 
肥厚した根は径20㌢、
長さ1メートルともなる。
 
秋に掘って、
臼(うす)でつき水洗いして底に沈んだ粉を乾かすとでんぷんとなる。
 
くず粉にくらべ、
粉は黄味をおび、
腰も弱く味は落ちるがでんぷんの歩どまりはよい。
 
くずより掘られることは少なかったので村の産物とはなり得なかったが、
昭和20年代まで掘り食べた家もある。

根のでんぷんは天瓜粉(てんかふん)、
こどものあせもをなおすだけでなく、
乳にまぜのますと風邪の熱を去るとされた。
乾かした乾かした根の煎(せん)液は
黄疸(だん)、
咳(せき)止め、
通経の薬ともされた。

このウリに人々は

”天の瓜”
の名を与え、
天瓜(てんか)とよんだ。

(本物のテンカフン)
 
「佐渡山菜風土記:伊東邦男」
より引用させていただきました。