【裁判例と判例の違いはご存じですか?】覚えておきたい判決文を読みこなすポイント

筆者は不動産会社のミカタにおいてコラムを執筆する場合、判断に至る根拠として判例を紹介することも多いのですが、これは不動産に限らず専門性の高いコラムにおいては同様の傾向があるでしょう。

意識して法律を学んでいる方なら最高裁で判決されたものを「判例」、地裁や高裁で判決されたものは「裁判例」と呼びわけるのはご存じでしょう。

判例は最高裁が過去に判決した事案の内容や解釈を示しており、その判断がそれ以降に行われる事案解釈に大きな影響を与えることになります。

階層によらず裁判所の独立性は保証されますが、それでも最高裁が日本司法制度の最高機関であるのは間違いありません。

最高裁判決が判例として、その後の法的な解釈に最も影響を与えることは納得できるでしょう。

解説するまでもく日本の裁判は三審制です。世界的に見ればドイツを筆頭に韓国や中華人民共和国も三審制を採用していますが、日本の場合、明治時代に制定された民法がドイツ民法を参考にしているほか、商法や刑法においても参考にしている部分が多く、三審制が現在も残っているのはその影響であると言われています。

もっとも、当初は参考にされてはいても、ドイツと日本は歴史的背景や文化的要素、価値観や国民性も異なるのですから、日本独自に進化を続けてきたものが、現在の日本で採用されている法律だと言えるでしょう。

どのような職種でも少なからず法律の影響を受けますが、不動産業者は物件調査や重要事項説明書、売買契約書の作成や読み合わせを行う関係から、とくに法律に対する知識が必要とされます。

これは専門部署に限らず、ほとんど全ての社員において必要とされるのですから、他業種と比較して特殊な傾向です。

法律に関しての理解を深めるには、制定されている法条文を学ぶ必要はもちろんですが、それ以上に大切なのは定められた法律がどのように用いられたか、つまり「判例」や「裁判例」についてより多く学ぶことです。

つまり漠然とではあっても、特定の行為により提訴された場合、およそどのような判断が下されるかを知っておくということです。

先述したように「判例」は最高裁による判断を指しますが、実質的には最高裁への上告提起・上告受理申立はほとんど認められないので、地裁もしくは高裁による判断の方が事例としては圧倒的に多いものです。

実際に筆者も、類似する事案についての判断基準を検討する場合、複数の裁判例を読み込んで参考にします。

ですがその際に注意したいのが、誤った判断の控訴審判決が確定している可能性です。

判例を読み込んでいる方ならご存じでしょうが、高裁においては和解まで含めると、地裁判決が維持されないケースが相当にあるのです。

もっとも、原則として各裁判官には職権の独立性があり、裁判事務において他のいかなる国家機関、指揮監督その他の干渉を受けないとされています。

ですから、裁判例が必ずしも最高裁で支持されない訳ではありませんが、そのような可能性があると理解しておく必要はあるでしょう。

今回は、悩んだ時に参考になる判例や裁判例を読みこなすために必要なポイントについて解説したいと思います。

判例を読みこなす必要性

ある事件において、例えばAという条文が解釈適用されて判決が下された場合、その後、類似する事件があった場合には「Aという条文を解釈適用してなされた判決」を解釈適用し判決されることになるでしょう。

つまり累々と蓄積される判例や裁判例は、その後の裁判において良くも悪くも判決に影響を与えるということです。

これにより、私たちは「どのような行為をすれば、それがどのような結果になるのか」を予測することができるようになります。

これが判例などを学ぶ主な目的ですが、さらにもう一つ「条文の持つ意味や内容が具体的にされる」という点も見逃せません。

定められた条文があってその解釈適用により判決が下される訳ですが、六法全書で条文を読んでも「このような場合はどう解釈すれば良いのだろう」と疑問になることが多いと思います。

つまりどのように解釈すれば良いのか悩む訳ですね。

読み方が浅いのだろうと思い、しっかり読み直しても答えが見つかりません。

これは皆さんが悪いのではなく、法条文の限界だからです。

そこで裁判例や判例の出番があるのです。

判例の構成パターンを理解する

判決文を読みこなすには、基本的な構成のパターンを覚えてしまうことです。

一度学んでしまえばあとは応用ですから、どんなに長く難解な判決文でも読みこなせるようになるでしょう。

●主文
訴えに対する裁判所の結論です。判決の結果を知りたいだけであれば、主文を読むだけで確認できます。ですが、事件の背景を知らなければどのように結論が導き出されたのかを知ることはできません。
●事実及び理由(請求)
主文と同様の趣旨で書かれますが、こちらは原告の請求を記載するとともに、主文が正当であることを示すために必要な原告と被告の主張の要点が記載されます。通常もっとも長文で、読み込むのに苦労するのがこの事実及び理由です。ここでは主文に至った理由として、事実について裁判所が抱いた心証や適用した法律を用い、主文で示した結論までの道筋を述べています。
●争点に対する判断
ここでは原告と被告の争っている事柄について、裁判所がどのように判断し主文に記載された結論に至ったのかを示しています。原告及び被告の主張が述べられると同時に、前提となる事実を明らかにし、それにたいして検討し裁判所が結論に至った過程が記載されています。

この3つが判決文の構成パターンなのですが、これを理解していただいたうえで読みこなすために必要なポイントを解説します。

まず、大切なのは「争点の把握」です。

何か問題がおきると、これもあれもと考えがまとまらないものですが、裁判においてはまず「争点」が絞られます。

それを原因として他の問題が生じているとしても、それは「別件」であり争点ではありません。

争点を理解したら、「規範定立」、「規範援用」、「結論」の三段論法を意識して判決文を読みます。

すると、その判決が従来の判例をもとに論理構築して判断されたのか、それともまったく異なる判断を行ったのかを読み取ることができるでしょう。

新聞などで「画期的な判例」などと称されるのは後者です。

これを読み取ることができるようになれば、面白さが分かります。

条文解釈に行き詰まった時には判例を探す。

そのために役立つのが「判例六法」ですが、無理をして購入する必要はありません(無論、所有していたほうが調査は早くなりますが)

判例や裁判例については、インターネット上で裁判所が公開している「裁判例検索」を利用すれば調査できます。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1

裁判例検索

検索には多少の慣れが必要です。

事件番号が分かっていればそこから検索するのがもっとも手軽でしょう。

裁判年月日や裁判所名からもある程度絞り込みはできますが、特定の判例などを調べる場合は多少手間取ります。

またキーワードを入力して検索することもできますが、意図しない検索結果が抽出されることの方が多いでしょう。

裁判例検索,総合検索

検索システムは最高裁・高裁・下級裁・行政事件・労働事件・知的財産の6種類について判例もしくは裁判例のほか速報を横断的に検索する機能を有していますが、すべての判決などが掲載されている訳ではありません。

また刑事事件の場合、訴状・公判調書・口頭弁論調書・証拠調べ調書などについて確認することはできません。

それらを確認したい場合には第一審裁判所に対応する検察庁で閲覧できますが、保管期限や閲覧資格制限が設けられています。

具体的には被害者やその親族、代理人弁護士などが損害賠償請求のため実況見分調書を閲覧する必要がある場合などに申請が認められます。

業務上横領事件などで不起訴処分になった場合、損害賠償請求に必要であることから調査する必要があるかも知れませんが、民事事件においてはあまり関係のないものですので、制度が存在していると覚えておく程度で良いでしょう。

まとめ

何らかのトラブルが生じ、和解のため話し合いをしていると、激昂した当事者から「納得できないから訴えてやる!」と啖呵を切られるのは珍しくありません。

筆者もこれまでの不動産人生において、仲裁立会なども含めれば何度聞いたか数えられないほどです。

良識人であれば些細なことで提訴することにメリットなど存在せず、判決が下されても費用倒れになることが多く、自己満足で終わることが少なくありません。

折り合いのつくところで和解する。

弁護士費用や訴訟のために必要な時間を勘案すれば、多くの場合そちらの方がメリットも多いのです。

相手方が激昂している場合、そのように「理」を説いても無駄ですが、冷静に聞く耳を持っている場合にはその限りではありません。

そのような場面の説得材料として利用できるのが判例や裁判例です。

裁判で争っても、類似する裁判令によれば、おそらくこの程度の判決しか得られないだろうと諭し、手間暇を考えればこのような条件で和解を考えてみたらどうかとの提案は、単なる仲裁よりも説得力があります。

トラブルの内容如何によっては裁判でしか決着がつかないケースもあるでしょう。

ですが例年、下級裁判所に限って言えば取り下げや和解が半数以上もあり、判決が出ているのは4割程度しかありません。

民事訴訟の平均審理時間である9ヶ月弱もの期間や、弁護士費用などを考えれば、どれほどのメリットがあるのでしょう。

司法制度改革により弁護士の人数が増加し、食えない弁護士が増加したとのニュースを耳にしたこともあるでしょうが、司法修習後すぐに開業した経験の浅い弁護士ほど、どのような案件でもすぐに訴訟を勧めてくるケースが多いものです。

キャリアのある優秀な弁護士ほど、訴訟する前に和解できないかを考えます。

私達、不動産業者はトラブルの当事者にもなれば仲裁人になることも多いのですから、判例や裁判例を日頃から学んでおくことにより、和解に至る提案を行えるようになるでしょう。

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