独白 愉快な“病人”たち

堀越のりさん 31歳で子宮頸がんの疑い…がんではないものを「切る」ことに納得できなかった

堀越のりさん(C)日刊ゲンダイ
堀越のりさん(女優/41歳)=子宮頸がん未満(クラス5)

 毎年、子宮頚がん検診を受けていた中で、ある年、陽性の判定が出たのです。「子宮頚がんの疑いがあります」と言われてしまったとき、「こんなにまめに検査しているのに、たった1年でがんの話になってしまうのか」とちょっと悔しい気持ちでした。

 結局、がんになる前に治療して、今はすっかり治りましたが、まだ3カ月に1度は検査をしてもらっています。

 検診で陽性が出たのは31歳のときです。当時はレギュラー番組がいくつもあって、睡眠時間も少なく、食事もゆっくりできない不規則な生活でした。ところが、がんの疑いがあるとわかった同時期に、偶然にも出ていたレギュラー番組が次々と終了になると知り、それならここでいったんお休みして治療に専念させてもらおうと思いました。

 家族に相談したところ、「治療のために事務所にご迷惑をかけるといけないから」と、病気のことを伏せたまま円満退社をしました。

 子宮頚がん検診の結果は、クラス1から5までの5段階評価です。クラス1は正常、クラス2はがんの心配はないけれど良性の変化がある段階。クラス3はいわゆるグレーゾーン。クラス4や5になると、がんを疑う細胞が見られる段階と言われています。最初に私が受けた結果はクラス最上級の5でした。高い確率でがんと診断される段階です。

 その後、紹介された病院で検査をすると、「がんではないけれど一歩手前」だと分かり、月1回のペースで組織を採取する検査を受けることになりました。検査のたびにクラスが下がったり、上がったりして、「このまま治るかも?」と希望を持ったり、その翌月はまた戻ったりの繰り返し……。病院を変えても、その状態はあまり変わりませんでした。そのうちに、どこへ行っても「切除」の話しか出なくなりました。

 私はまだがんではないものを「切る」ことに納得ができませんでした。先生の話も右から左に抜けてしまって、ちっとも頭に入ってこない。「みんながやっているからこれでいいんだ」と流されるのが怖かったので、自分でネット検索して、今の主治医である「波平レディスクリニック」の先生に出会いました。それが3年前のことです。

 先生の話は分かりやすく、スーッと頭に入ってきました。自費診療ですが、納得できる治療が受けられることが自分にとっては大事だったので、惜しくはありませんでした。

■まずはがん検診を受けてほしい

 治療は、子宮の入り口付近の洗浄と血液検査や組織検査です。電車で片道30~40分の道のりを毎日通うこと50日間。この期間は人によって違うそうですけれど、私は50日間の治療でHPV(ヒトパピローマウイルス)が消えました。

 子宮頚がんは、HPVに感染し、その炎症が長期化することで発症する病気です。このHPVは、男性と性交渉の経験のある女性なら高い確率で感染するものだそうです。でも90%の人は免疫力によって2年以内に排除されます。自力で排除できない残り10%の人が長期化する感染でがんになる可能性が高まるのだそうです。HPVをしっかり除去できれば、がんには移行しないと先生から説明されて、治療に積極的に取り組めました。

 私の周りでは、自治体の検診などで病気の疑いが出ても、放置している女の子が多いんです。月に1回検査するのが面倒くさいとか、検査はしても前回より良い結果が出たらすぐやめちゃうとか……。そういう声を聞くたびに、治療をないがしろにしないでほしいという思いを強くします。

 近年始まった子宮頚がんのワクチン(HPV感染症予防接種)の対象は若い人だけで、30~40代女性へのフォローはあまりありません。まずは子宮頚がん検診を受けてほしいです。私も毎年受けていたおかげで早期発見ができ、完治しました。ただ、行政の子宮頚がん検診だとHPVの数値が見られないので個人的には信用できないんですけどね(笑)。

 この一連の出来事で考えたことは、自分にも“がんの要素”があるのだということです。それまでは考えたこともなかったのですが、1度あったということは、将来また見つかるような気がしてしまいます。今、私たち夫婦に子供はいないのですけど、もし生まれたら母親を早く亡くすかもしれないから、子供がかわいそうだな……なんて妄想しました。それって考えすぎですか? でも、1つあると2つ目を探してしまう。がんってやつはそういうものですよ。

 じつは最初の検診で「子宮頚がんの疑い」が出たあと、自分の健康が信じられなくなって、がん専門病院の健診センターで健康診断を受けました。結果、がんは見つからなかったけれど、腸にポリープが3つ見つかってレーザーで切除する手術を受けました。

 今は、規則正しい生活を心がけると同時に、何かあるたびに「どうしよう」と焦ってバタバタしてしまう性格を改めて、ゆっくり考えて活動できるようになろうと思っています。

(聞き手=松永詠美子)

▽堀越のり(ほりこし・のり)1982年、千葉県出身。98年、ホリプロ「第2回夏のお嬢さんコンテスト」でグランプリを獲得し、芸能界デビュー。バラエティー番組を中心に、映画やドラマでも活躍した。2011年に結婚、翌年にホリプロを退社し、芸能活動を休止。19年から活動を再開しており、自身の経験から子宮頚がんの啓蒙活動にも尽力している。


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