恵俊彰、白髪は「反抗期」…芸人・MC・俳優「シンプルにやりたいこと」を35年

スポーツ報知
カメラマンのリクエストに「さすがだね。乗せるのうまいな~」と満面の笑みで応える恵俊彰(カメラ・矢口 亨)

 お笑いコンビ「ホンジャマカ」の恵俊彰(57)が、1987年の芸能界入りから芸歴35年を迎えた。お笑い芸人としてキャリアをスタートし、現在はTBS系情報番組「ひるおび」(月~金曜・前10時25分)のMCとして活躍する恵が異色のキャリアを振り返るとともに、相方・石塚英彦(60)との未来も語った。(田中 雄己)

 いつからか、画面に映る恵の姿に違和感を抱いていた。「どうして、白髪にしたんですか」。不躾(ぶしつけ)な問いにも、恵は丁寧な口調で答えてくれた。「40歳の頃から2週間に1度染めていて。若く見せたいと思っていたんですけど、老けることが悪いってどういうことなんだと思い直して。ちょっとした反抗期ですかね」。そう言うと、髪をなでながら笑った。「いつまでも元気でいられるわけじゃない。やりたいことをやりたいですから」。真っ白な髪は、半世紀以上歩んで見つけたシンプルな思いを代弁しているかのようだった。

 鹿児島市で生まれ育った。実家は、伝統工芸品「大島紬(つむぎ)」の工場。作業する父の後ろ姿、家に出入りする職人さん。「継ぐんだろうな」。物心ついた時から当たり前だった思いは、上京して薄れていった。大学受験に失敗し、予備校に通うために東京に来た初日の光景は「今も鮮明で」。「タモリさんがいるかもしれない」新宿アルタ前をうろついた。目に飛び込んでくるもの全てが「ワクワク、ドキドキ」。学園祭やディスコに通いつめ「1分も勉強しなかった」。あっという間に3浪した。「さすがに遊ぶ所もなくなって」と友人の誘いで受けた渡辺プロダクションのオーディションに合格。「お笑いへの思いより、ここで何かを成し遂げたい」。両親には勘当されたが、東京に居残る権利を得た気がした。

 劇場やテレビの仕事をこなしたが、1年目の年収は49万円。ビデオ店のアルバイトもしたが、「お米も買えなくて」。3万4000円の家賃も踏み倒した。当時付き合っていた彼女(のちの妻)から“お小遣い”をもらった。「間違いなくヒモでした」。そうした中で、88年に11人グループ「ホンジャマカ」を結成したが、次第にメンバーが減り、89年には石塚とのコンビに。「最初から波長が合って、お互いに尊重・尊敬していて。お互いに好きなことをやろうとね」。食リポやバラエティーで活躍する石塚に対し、恵は興味があったMCや俳優業に力を注いだ。

 94年の日本テレビ系「ロバの耳そうじ」で初めてMCを務めた。人気番組「11PM」の後枠で、「思い切りスケベで、夜のエンタメでしたけど、楽しかった」。経験を重ねて40代を迎え、06年からTBS系の情報番組「2時っチャオ!」でMCを任された。「30代はテレビ局で毎日大騒ぎしていた。でも、結婚をして子供もできた。やっぱり不安。毎日がパーティーじゃなくてもいいかなと」。視聴者に寄り添う姿勢が好評を呼び、3年後に「ひるおび!」へと看板を変え、今も続く長寿番組になった。「いろいろなスタイルがありますけど、僕は知ったかぶりをしない。それだけはするまじき」

 毎朝5時に起床し、新聞各紙に目を通す。「(2時っチャオ!の)1年前にJR福知山線脱線事故が起きて。それまでお昼はお笑いの時間だったと思うんですけど、情報という時代になっていった感覚があって」。3浪、ヒモと続いた“不マジメ”から一転して“マジメ”になったが、「質は同じ」だという。ここに、恵の哲学がある。「ドスケベは、ドマジメ論というのがあるんですけど」。意味が分からず、聞き返した。「マジメだからこそスケベで。軽いタッチの人は、どちらも軽い。深い人は、どちらも深い。とことんふざけてきたので、その反動で逆に振れただけで、やっていることは同じですよ」

 4月から早大大学院に入学した。「忘れ物を回収したい」。浪人時代3年連続で落ちた「憧れの場所」。「当時は問題を解いてもいない。『ここ、入りたいな』と座っていただけ(笑い)」。リポート作業、仲間とのディスカッション、学食での食事。「本当に楽しくて。この1年は学生生活を満喫して。その後は、1年に1個テーマを決めたい。ゴルフを極めたり、スキーを滑ったり。自分のための時間を過ごしたい」

 コンビでの活動は、「東京フレンドパーク」(TBS系)以外だと、ここ数年ない。石塚とは連絡を取るわけでも、干渉するわけでもない。だが、結成前に披露した初コントは今も覚えている。「教習所の先生と生徒の設定で。とても優しい先輩で」。目尻を下げた。「この先、(コンビ活動が)全くないかと言われればそんなこともない。お互いがやってみようかとなればね。なんたってシンプルに、やりたいことをやりたいお年頃ですから」

 芯をついた回答の中に、交じるユーモアは、お笑い芸人であり、キャスターでもある恵ならでは。「周期でいうと、あと3年くらいでまた“不マジメ”に転じるのでは」。そう聞くと、間髪入れずに返ってきた。「あると思います。次は、どう弾(はじ)けますかね」

 ◆恵 俊彰(めぐみ・としあき)1964年12月21日、鹿児島県生まれ。57歳。87年に芸能界入りし、89年に石塚英彦とコンビの「ホンジャマカ」結成。2009年3月からMCを務めるTBS系情報番組「ひるおび!」がスタート。俳優としてもTBS系「下町ロケット」など話題作に多数出演し、司会者やタレントなど多方面で活躍。身長170センチ。血液型O。3男1女の父親。

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