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福岡県の小学校高学年の女の子は昨年、食事を食べなくなる「拒食症」になりました。「食べなさいっていう人はみんな敵に見えた」と言います。
新型コロナウイルスの感染の広がりを防ぐため政府が決めた全国一斉の臨時休校が昨年3月に始まりました。4歳から続けてきたダンスの練習ができなくなり、鏡に映る体形が気になりだしたといいます。食事を何度か抜くと運動をしなくてもやせたため、自然と食べなくなりました。
お母さんは最初、女の子の変化に気づきませんでしたが、どんどんやせていく様子に戸惑いました。かかりつけの医師から摂食障害を疑われ、9月に専門の治療ができる九州大学病院に相談しました。
自分の力で立てず
女の子は病気と認めたくなくて、自宅での治療を選びました。しかし、食事がなかなか取れず、10月には身長140センチメートルで体重が13キログラムまで減ってしまいました。最後は自分で立てなくなり、救急車で病院に運ばれました。
入院当初はおかゆも食べられませんでしたが、診断のために撮影された自分の体を見て「これは死ぬかも」と感じたといいます。入院による治療で、だんだん食事の量を増やし、食べられなくなった気持ちを見つめ直す治療法や歩く訓練などのリハビリも受けました。治療を担当した九州大学病院の医師、高倉修さんは「小児期の摂食障害は命の危険と隣り合わせです。自ら治したいという意思を芽生えさせるのは簡単ではありません」と話します。
今年1月に退院し、体重は約27キログラムにまで増えました。今は食事もおいしく食べることができます。女の子は「やせた体重を増やす難しさが分かった。一時は自分の感情までコントロールできなくなり、考えるのがめんどくさくなった。あんなつらい思いはもうしたくない」と言います。
教育現場の取り組み
福岡市教育委員会と福岡市医師会は16年度から、「やせ」が著しい児童に診断を促す全国でも珍しい取り組みを進めています。19年度は市内の小学4年約1万3600人のうち、保護者の理解を得られた約8割の児童の身長と体重を調べました。計157人がやせの注意を促され、診察が必要な10人が受診しました。
福岡市医師会の医師、青木真智子さんは「受診を勧めても、子どものやせを問題と思っていない家族も多い。摂食障害の場合もあるので、正しい診断を受けることが大切です」と話しています。