Talpidae
米国ミネソタ州の「野生動物リハビリセンター」にいるトウブモグラ。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic Photo Ark)
米国ミネソタ州の「野生動物リハビリセンター」にいるトウブモグラ。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic Photo Ark)
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早わかり

分類: 哺乳類
食性: 雑食
寿命: ほとんどの種で2年
体長: 5~23センチ
体重: 14グラム未満~227グラム以上

モグラとは

 モグラは穴にすむ小型の捕食動物で、世界中に多くの種が生息している。穴を掘るための優れた能力をもち、地中や落ち葉の下、草むらなどに複雑な通路網を築く。

 一生のほとんどを地中で過ごすため目は退化して小さい。また外耳もない。外耳道が土で埋まってしまうからだ。多くの場合、体は円筒型で、強い肩とシャベルのような手で、まるで水中を泳ぐように地中を掘り進む。

 モグラの中には、驚くほど泳ぎが上手な種もいる。例えば北米北東部の湿地で暮らす半水生のホシバナモグラだ。鼻の先には名前の由来にもなっている奇妙な触覚器官があり、これを使って獲物である無脊椎動物を素早く探す。

 地中で生きるモグラは隠れた存在なので、研究がほとんど行われておらず、誤解も多い。

 例えば、多くの人はモグラには視力がない、あるいは目そのものがないと考えているが、それは間違いだ。すべてのモグラに目はある。とはいえ基礎的な視覚しかない。モグラは近視で色覚は退化しているものの、光を感知する能力は優れていると科学者は考えている。

 一方、モグラ科の仲間で水生のモグラ「デスマン」は、見た目は典型的なモグラだが、手には水かきがあり、穴を掘るよりも泳ぎに適している。また「ヒミズ」はモグラの仲間でありながら、地上で獲物を探すことが多い。

生息地と食性

 モグラと聞くと土の中で暮らす動物と考えがちだが、南米と南極を除くあらゆる大陸で草原、砂丘、森林、沼地、湿地などさまざまな環境で暮らしている。

 モグラの行動圏は他の小型哺乳類に比べると驚くほど広い。記録によると、北米に生息するオスのトウブモグラの行動圏は8000平方メートルを超える。

 モグラは穴を掘るのが得意だ。そして掘り出した土を地上に押し出して捨てる。これが「モグラ塚」だ。だがモグラが作るトンネルは単なる「穴」ではない。そこには寝室や出産のための部屋もある。

 トンネルは獲物を捕らえるための罠でもある。モグラは高さ約5センチのトンネル内を縦横無尽に動き回り獲物を探す。

 モグラは食虫動物として分類されることもあるが、実際は雑食性だ。消化管の内容物を調べると野菜や菌根菌なども見つかるが、節足動物、特に昆虫や甲虫の幼虫をよく食べる。しかし多くのモグラは、ミミズを食べることに特化している。

 モグラは大量のミミズを食べるため、食べる前にいわば「下ごしらえ」をする高度な方法を身に着けている。前脚でミミズを捕まえると、ミミズをしごいて外側の汚れを落としつつ、消化管の中にある土を外に押し出す。英国の自然番組の制作者であるデイビット・アッテンボロー氏は著書『The Life of Mammals(哺乳類の生活)』の中で、その行動を「歯磨き粉をチューブから絞り出すようだ」と述べている。

 食料が十分にある時は、モグラはミミズの頭を噛んで動けない状態にしてから、貯蔵室に蓄える場合もある。

生存に対する脅威

 めったに姿を見せないモグラには、天敵はほとんどいない。しかし機会さえあれば、タカ、フクロウ、アカギツネ、ハイイロギツネ、コヨーテ、イタチ、アライグマ、スカンク、マツテン、さらにはペットとして飼われている犬や猫などもモグラを襲う。

 しかし多くの地域において、モグラにとって最大の脅威は人間だ。人間は庭の芝をモグラに台無しにされないように罠を仕掛けたり、毒物を置いたりする。モグラは植物の根を食べたりはしないが、人間にとってはトンネルを掘られることが迷惑なのだ。土地開発や農業などによる生息地の変化も、モグラの生息数に影響を及ぼす。

保護活動

 モグラのほとんどの種は保護の対象にはなっていない。しかし数が減少していると懸念される種もいる。

 例えばベトナムと中国に生息するドウナガモグラ(Euroscaptor parvidens)は、国際自然保護連合(IUCN)によって1996年に近絶滅種(critically endangered)に指定されたが、現在は「データ不足(DD)」に分類されている。つまり絶滅の恐れを評価するだけの情報がないということだ。

 また、IUCNはロシアデスマン(Desmana moschata)を絶滅危惧種(endangered)に指定している。ロシアデスマンの行動圏で広く漁網が使われているのが原因だ、絶滅危惧種の指定を受け、一部で保護活動が進められ、再導入の試みも行われている。

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