1月17日公開予定の映画『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』は、気象学者ジェームズ・グレーシャーの実話をベースに、パワフルな映像、ストーリーで脚色した体感型アドベンチャー作品だ (東洋経済オンライン読者向け試写会への応募はこちら) ©2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

「僕たちは下を向いて、内面に目を向けさせられるような時代に生きている。でもこの映画は、上を向くことを夢見るような物語なんだ」――。

2014年の映画『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演男優賞を獲得した俳優エディ・レッドメインは、最新作『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』(2020年1月17日全国公開)についてそう語る。


1月10日(金)に独占試写会を開催します(上記バナーをクリックすると応募画面にジャンプします)

同作は、19世紀半ばに酸素ボンベなしで気球に乗って、高度1万メートル超での空の旅を成し遂げた気象学者ジェームズ・グレーシャーの実話をベースに、パワフルな映像、ストーリーで脚色した体感型アドベンチャー作品だ。

この気球の旅において、グレーシャーが上空でつけていた詳細な気象の記録が、後に現在の天気予報や、災害警報などに大きな影響を与えることとなる。

気象予報の礎となった気球の旅を映画化

そして本作のもう1人の主人公は、気球操縦士のアメリア・レン。2年前の気球飛行で夫を亡くし、生きる気力を失っていた彼女が、哀しみから立ち直るために再び気球に乗ることにチャレンジする。

アメリアは、女性初の気球飛行士であるソフィー・ブランシャールにインスパイアされたキャラクター。この勇気あふれる魅力的な女性を演じたフェリシティ・ジョーンズは「この映画における気球は希望の象徴だと思う。楽観主義と、どんなことも可能だという気分に満ちている作品なの」と本作を評する。

頭の中の理論は完璧だが実務経験に乏しい堅物の気象学者グレーシャーと、自由奔放なように見えながらも、実は経験豊かで頼りになる気球操縦士のアメリア。まったく正反対の気質を持つ二人は、最初は反発しあってばかりだった。


気象学者・ジェームズ・グレーシャーを演じるのは、『ファンタスティック・ビースト』などでも活躍するエディ・レッドメイン ©2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

だが、上空は恐るべき嵐と極寒の世界。死の恐怖と隣り合わせとなったこの人類最大のミッションは、二人が協力しあわなければ成し遂げることができない。この正反対の二人がどのようにして人類の限界に挑んだのか――というのが本作の見どころとなる。

本作でダブル主演を務めたエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズは『博士と彼女のセオリー』でタッグを組んだ名コンビ。

両者が生み出した化学反応は映画の質を最大限に高め、レッドメインが主演男優賞を獲得、ジョーンズは主演女優賞にノミネートされた。この作品がきっかけで、二人は名実ともにトップ俳優の仲間入りを果たした。その後、レッドメインは『ファンタスティック・ビースト』シリーズで、そしてジョーンズは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』といった超大作で主演を務めるなど、俳優としての地位を着実に固めている。

『博士と彼女のセオリー』の名コンビが復活

そんな二人が再びタッグを組む作品ともなれば、二人の相性のよさが感じられるような魅力的な作品でなければならない。そういう意味でこのグレーシャーとアメリアという役柄はまさに最適であった。


気球操縦士のアメリア・レンを演じるフェリシティ・ジョーンズは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの超大作でも活躍する ©2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

ジョーンズはこう語る。「エディとわたしはまるでボクサーのようなの。私たちはまたリングに戻ることができてうれしかった。私たちはお互いを刺激して、つねにさまざまなことを試し、お互いが満足する演技を見つけるまで続けるの。そんな慣れ親しんだ仕事相手とまた共演できて、すばらしかったわ」。

監督はトム・ハーパー。「ピーキー・ブラインダーズ」「戦争と平和」といった注目のテレビドラマを手がけてきた俊英だ。また、脚本は、イギリスで権威のある演劇賞であるオリヴィエ賞を総なめにした舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」や、ジュリア・ロバーツ主演の映画『ワンダー 君は太陽』などを手がけたジャック・ソーンが担当している。

ハーパー監督は、本作を制作するにあたり、「観客が気球に乗っているような経験をさせたい」と思ったという。そのため、19世紀当時のガスで駆動する気球を再現したレプリカを建造。実際にそれを飛ばしたシーンも撮影している。


高度1万メートルの世界を再現するために、気球のまわりに冷却ボックスを設置。リアルな極寒空間を実現させたという ©2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

「気球での撮影は本当に特別だった。気球は何が起こるかわからないし、どこに着陸するかもわからないから、風に身を委ねるしかない」とジョーンズが語れば、レッドメインも「気球はつねに熱狂の的だった。ある日の朝、僕らはオックスフォードの上空を飛んでいた。人々は見上げて、僕らに手を振っていたんだ。どこに着陸するかわからなかったり、空中に身を任せたりすることが人々を魅了するんだよ」と付け加える。

アマゾンスタジオが制作・配給

高度1万メートルという世界を、われわれはなかなか想像できるものではないが、上空では酸素が薄くなり、そして凍るような寒さが襲ってくるという。撮影所では、その世界を再現するために、気球のまわりに冷却ボックスを設置。レッドメインもインタビューで「あれは演技じゃなくて、本当に凍えていたんだよ」と語るなど、役者陣は過酷な状況と戦っていた。そんな彼らのリアルな感情が、観ているほうにも伝わってくる。

本作は、アメリカのAmazon.comの映画部門であるアマゾンスタジオが制作に参加。同スタジオが配給を担当した、2016年の映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』や『セールスマン』では、配信系の映画会社としては初となるアカデミー賞での受賞を果たすなど、近年、存在感を見せている。それだけに、本作も早くもアカデミー賞への期待が高まっている。

都会の中で暮らしていると、なかなか空を見上げる機会は少なくなる。だが、そんな時代だからこそ、スクリーンを見上げながらこの映画を観ることで、彼らの空への憧憬が胸に迫ってくるようだ。