「世界水泳カウントダウン連載」競泳開幕まであと6日―リオ五輪金メダル・萩野公介さん

　水泳界の“世界一決定戦”世界水泳福岡（テレビ朝日系で中継）が7月14日に開幕した。2001年以来22年ぶりの日本開催となり、中でも注目を集めるのは競泳だ。個人種目で金メダルなら1年後のパリ五輪出場が内定する今大会。「THE ANSWER」では7月23日の競泳開幕30日前から「テレビ朝日×THE ANSWER」としてタッグを組み、様々な企画を実施してきた。

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　その一つがカウントダウンでお送りする「ウルトラ連載」。出場選手のインタビューに加え、特別企画を織り交ぜながら大会を盛り上げる。17日の第28回は特別編。2016年リオ五輪男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介さんが登場する。テーマは「メンタルヘルス」。萩野さんが人生を豊かにするための意識、現役時代の休養経験、いま悩んでいる選手や周りの指導者らへのメッセージ、世界水泳を通じて発信したいことなどを聞いた。（聞き手＝THE ANSWER編集部・浜田 洋平）

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――東京五輪後に引退されました。抽象的な質問ですが、人生を豊かにするために普段から心掛けていることはありますか。

「最近はいろいろなものに鈍感にならず、敏感に生きていこうとは思いますね。例えば、花が咲いていたら『綺麗だな』、太陽が出ていたら『今日もいい天気だな』と思うとか。普通ならわざわざ気を配らなくてもいいところだと思いますが、そういう細かいところまで感じる心であり続けたいなと思っています」

――何かきっかけがあったのでしょうか。

「もともとの性格でもあるし、自然とそうなっていったと思います。つらいことがあると、鈍感になって『スルーする力』もできると思いますが、僕はあえてそうしません。全て真正面から受け止めて、楽しいことはもの凄く楽しいと感じて、つらいこともつらいと受け止める。それで気持ちの浮き沈みも出てくると思います。鈍感になってスルーすると、人として生きている意味がないなと思うんですよね。そういったことを大切にして生きていきたいと思っています」

――「豊か」の基準は難しいですが、人生でそれを感じられる瞬間はありますか。

「『周りから見る自分』と『自分が思う自分』が一致するのは珍しいと思います。周りが『大丈夫かな』と思っても、『自分は大丈夫だよ』と思っていたり。しかも、豊かの概念は難しい。物質的な豊かさなのか、目に見えない友情などの豊かさなのか。人それぞれですよね。自分の中で大変だと思っているけど、それを幸せと思うのか思わないのか。周りが大変と思っていても、その人次第ですよね」

――ご自身の今の生活の中ではどうですか。

「どうですかね。僕はマイナスに考えてしまう人間。良いことは良いけど、悪いことは悪いと捉えてしまいます。常に後ろ向きな気持ちもありますが、その中でなんとか生きている。生きることができているうちは二重丸かなと。最低限はクリアしている気はしますね」

――現役時代の2019年3月、心の不調で約3か月間休養されました。

「あの時の休養によって、何かがいきなりガラッと変わったということはありません。ただ、1回休みを挟んだことによって、少し物事をフラットに考えられるようになったと感じます。物事を楽に考えられるようになったわけではなく、『フラットに考えられる割合が多くなった』くらいな感じですね。

　ずっと指導していただいていた平井（伯昌）先生には、『水泳を水泳だけで解決するな』とよく言われました。それがどういうことなのか。休んだ時期は、その言葉の意味が少しわかるようになるきっかけだったのかなとも思います」