今でこそ、海外の映画やドラマでアジア系の役者やコメディアンの活躍を見る機会は増えたものの、ほんの十数年ほど前までは閉鎖的だったハリウッド。

そんなアメリカの映画・ドラマ業界で、数々の話題作に出演し、アジア系の役者のステレオタイプ(偏見)を覆すことに一役買ってきたといえるのが、台湾から移民し、アメリカで育った女優ルーシー・リュー。

本記事では、ハリウッドでの成功が難しいとされてきたアジア系役者として、ルーシー・リューがこれまでに経験した苦悩と、学んだ教訓をお届けします。



【INDEX】


ルーシー・リューが成し遂げた偉業

女優ルーシー・リューと言えば、映画『チャーリーズ・エンジェル』シリーズのアレックス役や、ドラマ『アリー my Love』のリン・ルー役、『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』のワトソン役など、様々な話題作に出演し、今ではハリウッドに欠かせない役者として知られています。

ルーシーは、ハリウッドで活躍した人たちを称える、『ウォーク・オブ・フェイム』の星形プレートに名を刻んだ史上2番目のアジア系女優。そして、「エミー賞」と「全米映画俳優組合賞」にノミネートされた初めてのアジア系女優という偉業を成し遂げています。

また、話題となったセレブが担当するといわれる、アメリカの長寿コント番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を務めた初めてのアジア系女優でもあるんだとか

instagramView full post on Instagram

機会すらもらえなかった

輝かしい成功を収めたルーシーだけれど、本人によると、大学を卒業し、女優を目指しロサンゼルスに移り住んだ当時は、アジア系であるが故にチャンスをもらうことが難しかったそう。

ハリウッドでは、タレントエージェントが仕事をブッキングしたり、報酬や待遇面の交渉を行う役割を果たしますが、ルーシーの場合、エージェントに仕事を依頼することすらできなかったのだとか。そのため、活動初期の頃はフリーランスの役者として、まずはエージェントに自らを売りに行く必要があったそう。

「当時は、オーディションの機会すらもらえなかったんです。ただ自分ができることを証明するための機会を探していました」

“アジア系”としての型にはめられ…

そんな状況から抜け出すキッカケとなったのが、人気ドラマ『アリー my Love』で、勝ち気で毒舌なリン・ウー役を射止めたこと。同役は、視聴者からの人気を得て、メインキャラクターとして採用されることに!

しかし、視聴者たちは“アジア系とはこうあるもの”というステレオタイプを通してリン・ウーを解釈するようになり、窮屈に感じたと話します。

「視聴者たちは、リン・ウーがパワフルで自己主張の強いキャラクターだから、『ドラゴン・レディ(アジア系のタフで短気な女性をあらわす言葉)』というレッテルをつけるんです。しかし、私はそんな風を演じたつもりもないし、ドラゴン・レディという言葉さえ知らなかったのに」

ルーシーは単に率直な女性を演じていたはずが、「それが“アジア系だからだ”と型にはめられてしまった気がして残念でした」と、当時の心境を吐露する一幕も。

『チャーリーズ・エンジェル』で感じた手ごたえ

映画『チャーリーズ・エンジェル』のアレックス・マンディ役に大抜擢されてからは、“アジア系”としてのステレオタイプが強い役柄から一歩退くことができて、手ごたえを感じたというルーシー。

「『チャーリーズ・エンジェル』に出演できたことで、“アメリカ”が持つ一種の伝統の壁を壊すことができたと感じました」

『チャーリーズ・エンジェル』の出演後は、さらに多くの映画、特に映画『キル・ビル』のオーレン・イシイ役のような、クション系のオファーが殺到したそう。

しかし、アクションに特化した女優になりたいと思ったことは一切なかったんだとか!特に、映画『ラッキーナンバー7』や『Watching the Detectives(原題)』は、新しい役柄に挑戦できて、印象に残った作品なのだそう。

「演技をするうえで自由度が高い役柄だと、とても勉強になります。何かを壊したり、天井を駆け上がる役よりも、ただの“女性”を演じることの方が特別感を味わえるんです」

これからのハリウッド

ルーシーは、自身が女優としてのキャリアをスタートさせたときと、現在のハリウッドを比較しながら、人種やジェンダーなど、様々なアイデンティティを持つ役者たちが活躍できる業界に進化しつつあると、嬉しさをあらわにした一方で、まだ改善の余地があると強調。

「ハリウッドでも多様性が重視されている様子を見ると、幸せに感じます。しかし、(我々が求めるレベルに達するには)まだ道のりは長いです」

キャリアを築く上で実感した気づき

そんなルーシーは、“アジア系”女優として苦労をしながら、体得した教訓を共有。それは、自分からアクションを起こすこと

「(役者の世界では)オファーの電話がくることを、受け身の姿勢で待つ人がほとんどです。しかし、私自身がキャリアを築く上で実感したことは、待っているのではなく、自ら電話をかけることの大切さでした。自分から積極的に行動すれば、チャンスが生まれるのです

ルーシーの積極的な姿勢は、映画・テレビドラマの業界やキャリアにおけるものだけではなく、人生に通ずる教訓なのかもしれません。

※この翻訳は抄訳です。

Translation: ARI

Woman's Day