写真家・前田真三さん
町民が選んだ30枚の丘

北海道・美瑛の丘の風景を見出し、生涯にわたり撮り続け、世界に広めた風景写真家・前田真三さんの生誕100周年記念展が、丘のまち交流館ビ・エール(美瑛町本町1丁目)で開かれています。記念展を準備してきた真三さんの孫で、写真家・アートディレクターの前田景さんは「祖父がたどった足跡と功績を、地元のみなさんとあらためて振り返りたい」と話しています。

丘から丘へ撮影に奔走していた真三さんの姿は、多くの町民が見かけていました。会場にはそうした町民が選んだ30枚が展示されています。真三さんにお茶を淹れてもらったのが一番の自慢という写真家の黒川政司さんは、雪の模様を広角レンズで捉えた作品を選びました。「同じような構図で撮るカメラマンはまずいない」と、その独特の視点を語ります。

また刈り取り後の小豆畑を収めた一枚を選んだ農家の佐渡志朗さんは、「農作業の結果だけでなく、前後の時間まで想像させてくれる」と語り、真三さんは見慣れた場所の一番良い時間や季節をいつも研究していたと振り返ります。真三さんの写真集がきっかけで美瑛に移住したペンションオーナーの岩崎誠さんは、代表作の「麦秋鮮烈」を選びました。「あの写真集を見ていなかったらいまの自分たちはない」と感謝します。

作品はニュープリントの大判で展示されていて、丘のスケール感や空の広がりが、撮影時の空気と共に鮮やかに伝わってきます。景さんは「祖父が描いた夢のある風景を、次の世代に伝えたい」と話しています。

7月31日(日)まで、入場無料。またフォトギャラリー拓真館(美瑛町字拓進)でも、景さんらが別の視点で選んだ30枚を来年1月下旬まで展示中。問い合わせはビ・エール(TEL0166-92-5677)、拓真館(TEL0166-92-3355)へ。