なぜ倒れない? 136メートルの無線塔 佐世保の針尾送信所 建設100年、基礎の仕組みが判明

2023/09/02 [10:05] 公開

3つの無線塔が並ぶ針尾送信所。塔が立っている岩盤も基礎の役割を果たしているという=佐世保市

 昨年、建設から100年を迎えた長崎県佐世保市針尾中町の国指定重要文化財「旧佐世保無線電信所」(通称・針尾送信所)。高さが約136メートルもある塔が、なぜ倒れないのか-。最大の理由として、塔が立っている岩盤の強度が高く、基礎の一部となって支えていたことが1日までに分かった。市文化財課の保存調査で判明した。
 市は送信所の長期保存に向け、昨年12月に劣化状況や耐震性を検証する調査を始めた。基礎の形状を確認するため、三つある塔のうち、1号無線塔の根元付近を深さ約6メートル掘削。鉄筋コンクリート製の基礎の下に、凝灰岩と呼ばれる岩盤を確認した。「九州で一、二を争うほど」(同課)の強度だという。
 地中に埋まっている塔の基礎は、わずか約6メートルしかない。皿をひっくり返したような形で、地表の根元部分の直径は約12メートル、基礎の底部分の直径は約24メートルあるという。ほかの二つの無線塔の地中にも岩盤があった。
 調査により、凸凹のある岩盤を手作業で平たんにして、薄いコンクリートを敷き水平にした。その上に底の部分が広がった塔を乗せて、周囲に土を盛り、その圧力で現状を保っていることが判明した。「巨大な塔が土に埋まっている状態」という。

針尾送信所の基礎部分

 基礎を巡っては、2009年に基礎の形や地中の土を調べるため、市がボーリング調査を実施。岩盤の存在を確認し、基礎の役割を果たしていると想定していた。今回の保存調査で裏付けされた。
 同課文化財専門職の松尾秀昭さん(43)は「送信所の立地は偶然ではなく、岩盤が強い場所を選んだのだろう」と見る。建設当時は機械もなく、手計算で設計しており「100年たっても塔が残っていることで、(当時の計算や技術の高さが)実証されている。驚くべきこと」と強調する。基礎の仕組み解明により「(無線塔の建造が)日本の近代化にどのような影響を及ぼしたのか、今後研究していきたい」と話す。
 市は9、10日、現地で掘削した基礎部分を特別公開する。両日とも午前10時~午後3時、針尾中町の針尾送信所1号無線塔。予約不要、入場無料。年齢制限はなく、基礎部分を見学デッキから見下ろすことができる。問い合わせは市文化財課(電0956.24.1111)。

◎旧佐世保無線電信所
 旧日本海軍が1918~22年に、総工費155万円(現在の約250億円)をかけて建造した無線通信施設。3本が300メートル間隔で正三角形に並ぶ。鉄筋コンクリート製で、高さは約136メートル。太平洋戦争の際には、暗号電文「ニイタカヤマノボレ」を送信したともいわれている。戦後は海上保安庁が使用し、97年に役割を終えた。2013年に国の重要文化財に指定された。