テレビ時代劇「大岡越前」などで知られる俳優加藤剛(かとう・ごう)さん(本名・加藤剛=たけし)が6月18日午前、胆のうがんのため亡くなったことが9日、分かった。80歳。故人の遺志で6月28日に家族だけの密葬を行い、9月22日に「お別れの会」が東京・六本木の俳優座劇場で行われる。

 この日、取材に応じた次男で俳優の加藤頼(37)によると、加藤さんは今年3月に体調を崩し、検査で「胆のうがん」と判明。加藤さんにも告知された。頼は「少し痩せたけれど、それまで体調は悪くなかった。告知された後も、父は前向きで、必ず元気になると信じていた。『もう少し辛抱すれば、良くなる』と、僕らを心配させないように言っていました」。

 亡くなる4日前、頼さんが仕事で地方に行くため、3日間見舞いできないことを伝えると、「心配かもしれないけれど、ちゃんと(仕事を)やってきなさい」と逆に励まされたという。18日朝はまだ会話も出来たが、直後に容体が急変。午前10時11分に妻牧子さん(81)、長男の俳優夏原諒(43)、頼ら家族7人にみとられて静かに息を引き取ったという。

 舞台やテレビでの共演が多かった頼は「病床でも、体調がいいと、芝居の話ばかりしていた。役者としては自分にどこまでも厳しかったけれど、他者には寛容で、優しい父だった。どれだけスターになっても、謙虚さを失わなず、家族のことを大事に思ってくれる父でした」。加藤さんの遺志で6月28日に喪主を設けず、家族だけで密葬を行った。9月22日には加藤さんの舞台の本拠地だった俳優座劇場でお別れの会を行う。

 加藤さんは早大在学中の60年に俳優座養成所に入所。端正な二枚目俳優として人気を集め、「大岡越前」では70年から99年まで主演したほか、「三匹の侍」などのドラマに主演。映画「忍ぶ川」「砂の器」などにも主演した。68年に当時女優だった牧子さんと結婚し、2人の子どもをもうけた。最後の舞台は16年の俳優座「先生のオリザニン」、最後の映画は今年2月公開の「今夜、ロマンス劇場で」。昨年12月に親子共演したテレビ朝日系「徹子の部屋」が最後の仕事になった。