楽曲、放送で使い放題に転機 JASRAC契約「参入の妨げ」
テレビやラジオで使われる楽曲の著作権料をめぐり、日本音楽著作権協会(JASRAC)の契約方法が独占禁止法違反にあたるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁は28日、「他業者の参入を妨げている」と指摘し、公正取引委員会に再審理を求めた。JASRACが著作権を管理する楽曲は300万曲。一定額を支払えば何曲でも使い放題という契約は放送局側にも利点が多いが、最高裁は独禁法違反の恐れがあるとして「待った」をかけた。
JASRACは音楽会社や作詞・作曲家などの著作権者から著作権管理を委託され、利用者から著作権料を徴収する。かつては国内唯一の管理事業者として楽曲管理を独占していた。2001年10月施行の著作権等管理事業法で他業者の参入が可能となったが、JASRACの市場シェアは98%(13年度)を占める。
問題とされたのはJASRACがテレビ局やラジオ局と結んでいる著作権の「包括契約」。放送事業者が年間の放送事業収入の1.5%を支払えば、300万曲を自由に使える仕組みだ。個別の楽曲ごとに使用料を徴収する方式に比べ、放送局に割安になるよう設定しており、ほぼすべて包括契約を結んでいる。
訴訟では、この包括契約が独禁法違反(私的独占)にあたるかどうかが争われた。
最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は28日の上告審判決の判決理由で「放送局は包括契約によって、使用料の追加負担が生じないJASRACの楽曲を選ぶこととなり、他の事業者が管理する楽曲の利用は抑制される」と指摘。そのうえで「正常な競争手段の範囲を逸脱する」と判断し、独禁法違反の恐れがあるとした。
JASRACの包括契約については公取委の判断も揺れた。公取委は09年、独禁法違反にあたるとして排除措置命令を出した。これに対し、JASRACは不服を申し立て、放送局が包括契約を理由に他業者の管理する楽曲を使わない証拠はないと主張。公取委は12年、主張を認めて命令を取り消す審決を出した。
納得できない著作権管理会社、イーライセンス(東京・渋谷)が審決取り消しを求めて提訴。13年の東京高裁判決は「他の事業者を排除している」として審決を取り消し、この日の最高裁判決も同判決を支持した。
今後は再び、公取委で独禁法違反にあたるかどうか審理される。「競争を実質的に制限しているか」などの論点が検討される見込みだ。JASRACは28日、「独禁法違反に当たらないと引き続き主張していく」とコメントした。