「仕事を辞めてもOK」 年120万円の配当で悠々自適
配当長者の投資戦略(1)
「配当によるインカムゲインがあるのはやはりありがたい」
7月下旬の休日。神奈川県内の喫茶店で会った男性は、こう口にした。会社員投資家のFPかもめさん(ハンドルネーム)。2014年12月に一念発起して以前から取り組んでいた株式投資に本腰を入れ、それからの5年間に平均20%のリターンを上げてきた。
FPかもめさんが主に手掛けるのは、グロース(成長)株投資だ。売り上げと利益が拡大している成長企業の株を売買する。現在は運用資産の7割を10銘柄に集中。2年以上保有して、大きな値上がり益を得ることを目指している。
配当は実質的には再投資
一方で、運用資産の2割は、配当や株主優待の獲得を目的とした銘柄に投じる。そうすることで、保有株がグロース株に傾き過ぎることを防いでいるという。
「成長企業の株は、成長がストップしたり、全体相場が暴落したりすれば、価格が3分の2や半分に下がってしまう。そのダメージを軽減するため、高配当株や優待株を持つようにしている」。FPかもめさんはこう説明する。
昨年に受け取った配当の総額は約120万円に上った。「今年はその額と同じか、もしくは少し上回りそうだ」
「もともとお金をあまり使わない。年100万円あれば、生活していける。今の配当額を維持できれば仕事を辞めることも不可能ではない。それが自分の心に余裕をもたらしている」と続ける。
配当の振込先は証券口座ではなく銀行口座にして、生活費に充てている。ただし、「銀行口座から証券口座への入金の方が多く、配当を再投資に回していると言った方が適切かもしれない」と話す。
配当株投資で3つのスタンス
下の表は、FPかもめさんの配当株投資に対するルールをまとめたもの。配当の予想額を株価で割って算出した予想配当利回りが3%超から4%の銘柄については、増配によって配当の受取額が増えるものを選ぶ。そのために、業績が拡大していて増配する余力が生じているかどうかをチェックする。
予想配当利回りが4%超~5%ある銘柄については、現時点の配当額を受け取り続けることを念頭に置く。そこで、業績の悪化などに伴って減配に陥る恐れがないかどうかを確認する。
そして、配当利回りが5%を超える銘柄では、減配を覚悟して短期間の高利回りを享受する。このように配当利回りの水準に応じて投資の観点を変えている点も、配当株投資のノウハウとして参考になりそうだ。
コロナショックで株式市場が暴落した後には、配当と値上がり益の両方を狙って、企業向けパッケージソフトとシステムの開発・販売を手掛けるクレオ(9698)を新規購入。さらに携帯電話販売大手のコネクシオ(9422)を買い増しした。
(中野目純一)
[日経マネー2020年10月号の記事を再構成]
関連企業・業界