ドラマ「ドクターX」シリーズで長年、医師役を務めてきた鈴木浩介さん。次の舞台『奇蹟』では、名探偵とともに “謎が眠る森”で事件を解き明かす医師役を演じるそうです。いよいよ始まる稽古を前に、舞台の醍醐味や「鈴木さんが経験した奇蹟」について語っていただきました。

　俳優の鈴木浩介さんは西田敏行さんに憧れ、この世界に飛び込んだ。名優・西田さんにもらった金言「芝居をしないということは、100芝居をすること」を、ずっと羅針盤にしている。「西田さんのように、お芝居なのにお芝居に見えない人ほど、実は細かい演技を積み重ねている。僕がそう簡単にできることではないけれど、一生のテーマとして取り組んでいます」

　シリアスもコメディもこなす演技力で話題のドラマに引っ張りだこの人気者だが、「主軸は舞台です」ときっぱり。「一生懸命稽古したものをお客さまに見てもらい、答え合わせをする。お客さまの反応があってこそ物語に血が通い、最終的に作品が完成する。それが舞台の魅力です」。劇場では、常に感謝の気持ちを持って芝居を始めるという。

　次の舞台『奇蹟』では医師役。「頸椎から脊椎を含む脊髄の疾病の矯正手術……なんて医療用語も出てきますが、探偵もの。今は子育ての合間に台本を読んでいるところで、早く覚えて自由自在に台詞せりふが言えるようになるのが楽しみです」とのこと。タイトルにちなんで自身に起こった“奇蹟”について聞くと、「それこそ去年、47歳で子どもを授かったことが一番の奇蹟。妻と交代で寝かしつけるんですが、寝落ちする瞬間を隣で見ているのが至福のときです」。

文：みやじまなおみ　写真：安友康博(機関誌「済生」2022年3月)
ヘアメイク：奥山信次(barrel)
スタイリスト：久修一郎(インピゲル)