7月21日投開票の参議院選挙。各陣営がなんとか有権者の関心を引こうと制作しているのが『選挙ポスター』です。その知られざる世界とは…?

参院選の公示からおよそ1週間。連日街頭では党首や候補者が声を枯らし、街宣車が走り回り…と。だんだん選挙ムードが盛り上がってきました。

選挙ならではの光景といえば…ずらりと並ぶ選挙ポスター。1人で写ったり2人で写ったり、はたまた顔写真がなかったり…。熱気がほとばしる表情に、スタイリッシュでクールなものまで、色々とあります。

街中のいたるところに設置される掲示板は、その数なんと東海3県で、およそ2万2000箇所!岐阜選挙区の候補者もそのポスターにかける想いは強いようで…。

大野泰正候補(自民・現):
「夏の選挙ですから、みなさん涼しげな方がいいのかなっていうことも思いながら」

パッと見の印象を重視する候補者もいれば…。

梅村慎一候補(立民・新):
「少しシミとかは消してあるかもしれません」

お肌まで、気を配っているようです。

さらに、候補者の顔はさておき…党の主張をズドーンと直球でぶつけるポスターも。そんな坂本雅彦候補(諸派・新)は「2千枚位は貼りたい」と意気込みます。

個性豊かなポスターに注目すれば、選挙に参加するのが楽しくなるのでは…。選挙ポスターに隠された、候補者たちの戦略を取材しました。

高井キャスターがやってきたのは、名古屋市中区にある山崎デザイン事務所。これまで名古屋市議の選挙ポスターなどを手掛けてきました。

アートディレクターの吉松哲哉さんにお話を伺いました。

高井キャスター:
「どういう形で舞い込んでくるんですか?」

吉松さん:
「広告代理店からお話いただいてご本人さんとお会いしながらですね」

高井キャスター:
「特別な考え方とかアプローチがあるんですか?」

吉松さん:
「候補者さんの意志だったり公約部分を聞いてご本人が仕上げたいイメージというのを大事にして」

具体的にどんなポイントがあるのか、高井キャスターを候補者に見立てて実際にポスターを作り、候補者の“戦略“を教えてもらいます。

吉松さん:
「候補者ポスターということで写真が一番重要視されてくる部分なんですけれど、基本笑顔、きりっとした顔、ポージングをつけたりバリエーションがあります。お話の中でどうやって撮っていくかということを決めていきます」

一般的に、ポスターの中で一番大きな面積を占めるのが顔写真。事前に撮影した写真を見比べてもらいながら、その違いが与える効果を教えてもらいました。


高井キャスター:
「一番左は笑顔をしてみましたが、どういう印象ですか?」

吉松さん:
「親しみ感、おだやかな暖かさのある感じですね」

高井キャスター:
「正面。よくある顔つきのものは?」

吉松さん:
「きりっとした感じで、正面を見据えているので信頼感。そういうことをアピールしますね」

高井キャスター:
「すこし別の方向を向いたものは?」

吉松さん:
「目線をはずして、信念をもって何かを見すえて居る感じがでますね」

高井キャスター:
「ガッツポーズのものも撮りましたが、いかがでしょう?」

吉松さん:
「新人候補者ということで若々しさとかアクティブ感とか。やる気は感じられると思います」

笑顔で映るのは、親しみを感じさせたい写真。正面の真顔は、顔を知ってもらいやすい効果が。

そして目線を外すのは、未来を見つめる強い意志などを表し、ポーズがあると若々しさを演出できるということです。

ちなみに、この中で新人候補がよく採用するというのが、「正面の真顔」。まずは顔を覚えてもらうことが大切ということでした。

高井キャスター:
「候補者が何をアピールしたいなということと、写真は密接にかかわっているということですね。写真について決まったら次は何を検討しますか?」

吉松さん:
「やっぱり名前をどう表示させるかですね。苗字は漢字で名前は平仮名にしましょうとか全部平仮名の方がいんじゃないかとかそういう話をします」

漢字は力強さを表し、見る人が視覚的に名前を憶えやすいというメリットも。

ひらがなは読みやすさを最優先、温かみも演出できます。

苗字か名前どちらかだけひらがなにして、両方の『いいとこ取り』をする候補者も多くいます。

吉松さん:
「高井さんの場合は『高井一』と漢字にした方が、強さが漢字自体にあると思います」

高井キャスター:
「次にはどんな作業が?」

吉松さん:
「次は写真の背景というか、色だったり写真だったりポスター自体を盛り上げていく演出に入ります」

写真を撮った後に考えるのは背景。パソコン上でさまざまなものを合成することができるんです。

吉松さん:
「薄いグラデーションを入れて、あくまでも名前と顔写真が際立つようにシンプルなものに。色が付くことでよりインパクトが増す感じですね」

シンプルな色味で名前と顔を強調させるものもあれば、色を付けることでイメージカラーを印象づけることもできます。

高井キャスター
「色以外ではどういう背景がありますか」

吉松さん:
「キャッチフレーズで『ふるさとイチバン』というのがありますので、実際に街に出て、街の背景にしたり。都心なんですけれど、もう少しカジュアルな感じに」

高井キャスター:
「それもやっぱり全体として『ふるさとイチバン』というキャッチフレーズを意識したら、緑がいいのか都市がいいのか戦略なんですね」

吉松さん:
「選挙区によっても変わってくると思います。背景はちょっとした演出なのであくまでも顔写真と名前だと思います」

高井キャスター:
「キャッチフレーズと背景の関係を見ながら選挙ポスターを見ると色々面白いことに気が付くかもしれませんね」

ポスター制作の裏側を知ったところで、改めて参院選のポスターを見てみると…候補者が有権者に何をアピールしたいのか見えてくるかもしれません。