民進党代表戦について語る仙谷由人

民進党代表選は、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官が論戦を繰り広げている。支持率が低迷する野党第1党は、再生への手掛かりをつかめるのか。旧民主党政権で官房長官を務め、論客としても知られる徳島市出身の仙谷由人氏(71)に聞いた。(聞き手=石津遼、伊藤典文)

|今回の代表選が持つ意義は。

 政権担当能力のある政治勢力をつくるのが民進党の政治家の役目だ。民進党の政治的なポジションをどう定め、基本的な政策をどう国民に提示するか。そこが問われている代表選だ。投票権を持つ議員や支持者は、自分たちの投票結果が良くも悪くもブーメランのように返ってくるということをよく考え、新代表を選ぶ必要がある。

 町長選や町議選も同じで、無投票で競争がなくなれば必ず政治は劣化し、地域の活力は落ち込む。その意味でも、今回の代表選では良い競争が生まれてほしい。「党の分裂」などとよく言われるが、そういう話があるところの方が活気があるのかもしれない。

|前原、枝野両氏の人物像は。

 男気は前原の方が強い。使命感や責任感が強く、すぱっと責任を取るタイプだ。その意識が強すぎると余分なものまで背負い込んでしまうから欠点にもなるが、出処進退のけじめをきちんとつけられる人だと言える。

 枝野の持ち味は頭のシャープさだ。政策・法律の理解は、今の政界ではナンバーワンに近い。半面、論理的に分かりすぎてしまう部分があるから、ブレーンやスタッフの力を意識的に借りなければ、政策に膨らみが出ない。

|野党共闘に対する考え方を聞きたい。

 衆院選は権力をつくる選挙で、場合によっては連立政権になる。共産党が候補者を降ろす消極的協力をしてくれるなら、異を唱えるつもりはない。ただ、統一候補や統一名簿のような話はあり得ない。共産党と一緒に政権をつくることがいいとか悪いとかではなく、あまりにも矛盾が多い。部分的にできることはあっても、基本的に一緒にはできないだろう。

|民進党が低迷している現状をどう見ているか。

 旧社会党出身の立場からすれば、選挙のたびに議席が減り、消えてなくなった旧社会党と同じ道をたどる可能性はあり得ると感じている。しかし、じゃあ自民党が安泰かと言うと、そうでもない。自民党の政治家だって、知的にも政治的にもものすごく劣化している。民進党だけの現象ではない。

 |党勢回復の手立ては。

 今から党をつくるつもりで、考えて実践し、実践しながら考えてという作業を繰り返すしかない。旧民主党時代にせっかく政権を担った経験がありながら、(下野して以降)この4年間は霞が関や経済界、労働界、ジャーナリズムなどとの関係をしっかりつくってこなかった。声を掛けて話を聞かせてもらったり、一緒に飯を食ったりしたという話があまり聞こえてこない。そういうところから関係を広げなければいけない。

 せんごく・よしと 東京大法学部中退。弁護士。1990年の衆院選徳島全県区で旧社会党から初当選。93年の衆院選で落選したが、小選挙区制が導入された96年以降、徳島1区で旧民主党から5期連続当選。民主党政権で行政刷新担当相、国家戦略担当相、内閣官房長官などを歴任。2012年の衆院選で落選した。現在は民進党徳島県連常任顧問。東京都内を拠点に、日本ミャンマー協会副会長や政策研究大学院大客員研究員を務める。徳島市出身。71歳。