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2022.09.21鉄道227系(JR西日本) 高い安全性と居住性を備える地方都市圏の新顔

高い安全性を備え、国鉄型電車に代わる最新の輸送サービス

鉄道ファンといえば新幹線、観光列車に特急列車が好き……。それはもちろんその通り。

しかし日々の通勤や通学を支える普通・快速列車にも、たまらない魅力が隠されています。さながら実家のような安心感と最先端の技術を兼ね備える不思議な存在、それが普通・快速列車なのです。

今回は、行き届いた高い安全性を備え、長年国鉄型電車が走ってきた地方都市圏に新しい旅客サービスを提供する、227系を紹介します。

227系の基礎知識

広島・和歌山地区に導入された初めての「最新型」車両

JR西日本エリアの地方都市に、最新の輸送サービスを提供する。227系はそんなコンセプトをもって生まれた直流電化用近郊型電車です。

2015年3月14日から広島地区の山陽本線・呉(くれ)線・可部(かべ)線に0番代が投入され、現在は和歌山地区の和歌山線・桜井線・紀勢本線でも1000番代が活躍しています。

どちらも、これまで国鉄型の古い車両が使用されていた地域で、完全な新型車両が本格的に導入されるのはJR発足後初めてのことです。


227系は、近畿エリアで活躍している225系をベースに開発された車両です。

車体はステンレス製で、2013年に製造されて北陸地方に投入された521系0番代と共通のデザインを採用。各車両とも全長は20mで片側3扉の構造となっています。

最高速度は110km/h。将来的には120km/hでの運転も可能なよう設計されています。


過去の事故の教訓から、JR西日本の他の車両と同様に、安全性向上に特に力が注がれています。衝突時に車体の一部がわざと壊れることで衝撃を吸収し、乗客や乗務員を守る前面衝撃吸収構造に加え、側面衝突やオフセット衝突(車体の一部が障害物に衝突する事故)への対策も施されています。

連結部と先頭車には、連結時にホームから転落する事故を防止する転落防止幌(ほろ)が設けられました。

メリットが多い0.5Mシステム

動力方式には、ベースとなった225系と同様の「0.5M」と呼ばれるシステムを採用しています。

これは、運行に必要な機器類を1両にすべて搭載する一方、通常は各車両2台ずつある台車の両方に搭載する主電動機(モーター)を、片方の台車にのみ備えるものです。各車両の重量が平均化され、揺れを抑えて乗り心地が向上。制御装置を各車両に設置することから、一部の車両が故障しても動けるようになっています。

全車電動車であるおかげで編成を自由に組み替えられることも特徴で、需要に合わせて2両編成と3両編成を組み合わせ、最短2両、最長8両で運行できます。

分割・併合を頻繁に行うので、先頭車は併結時に乗客が行き来できるよう貫通構造になっています。ただし、先頭車になるときはスライド式の仕切りで仕切られるので、キハ120形などのように運転席の右側に立って前面展望を眺めることはできません。


運転台は、JR西日本の標準的な仕様で、左にマスコン、右にブレーキを配した2ハンドルマスコンを採用しています。

227系独自の仕様となるのが計器類で、従来の機械的な計器をやめ、2台のタッチパネル式液晶モニタにグラフィックで表示されるようになりました。

また、マスコンの左右には運転席に座ったまま、モニターを見ながら操作できるドア開閉ボタンがあり、ワンマン運転時の定時運行性が向上しています。

227系 0番代

広島らしい「赤」の電車


広島地区(山陽本線・呉線・可部線)に投入された車両で、2両編成と3両編成があります。

JR西日本が地方都市圏で運行する車両は、地域ごとに単色で塗装されて来ましたが、227系では地域性を一層重視して独自のデザインを採用しました。

ステンレスボディに広島県の木であるモミジや宮島の大鳥居、カープカラーなどをイメージした赤いラインを配し、先頭部と側面には「JRシティネットワーク広島」のロゴがデザインされています。

各路線カラーを包む赤いマークが、どこか広島の人気球団を思わせますね。

便利で広島らしい車内の様子

座席は、225系や521系と同じシートピッチ910mmの転換クロスシートで、扉付近には折り畳み式の補助席があるほか、車端部はロングシートになっています。

シートには広島らしさを表した、シックな赤系の生地を採用。またクモハ226形には車いす対応の循環式トイレを備え、その対面に車いす・ベビーカースペースがあります。

乗降扉には乗客が自分でドアを開閉できる半自動扉ボタンがあり、左右6カ所の扉のうち3カ所には次の停車駅などを案内するLED案内装置が配置されています。

【おもな運行線区】
山陽本線(福山駅〜徳山駅)、可部線、呉線

227系 1000番代

ロングシートながら長時間乗車も快適


和歌山地区(和歌山線・桜井線)と紀勢本線の一部で運行されている番代区分で、2019年3月16日から運行を開始しました。2022年9月現在では2両編成34本が活躍しています。

車体は奈良・和歌山エリアの歴史と文化、自然の奥深さを表現した深いグリーンを基調としたデザインで、座席のモケットも落ち着いたグリーンにまとめられています。


走行装置など基本的な仕様は0番代と同じですが、こちらはラッシュ時の混雑度を考慮して全車ロングシート。1人当たりの幅は440〜470mmとゆったりとしていて、長時間乗車しても疲れにくいのも特徴です。無人駅が多いこともあり、各扉付近にはICカード端末と整理券発券機を備えています。

0番代と同様、クモハ226形に車いす対応トイレと、各先頭車に車いす・ベビーカー用スペースを備えています。トイレの利便性は変わりませんが、処理装置はメンテナンス性に優れるカセット式(浄化排水式)となりました。


【おもな運行線区】
和歌山線、桜井線(万葉まほろば線)、紀勢本線(きのくに線[和歌山駅〜新宮駅]、和歌山市駅~和歌山駅)

岡山にも進出予定! 今後も期待の227系

2023年には、岡山地区への導入も決定している227系。

高い安全性と居住性を備え、さまざまな規模の都市に対応できる車両で、これまで国鉄型電車を大切に使って来た地方都市に新しい鉄道サービスを提供しています。


著者紹介

栗原 景(くりはら かげり)

1971年、東京生まれ。鉄道と旅、韓国を主なテーマとするジャーナリスト。出版社勤務を経て2001年からフリー。

小学3年生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。

東海道新幹線の車窓を中心に、新幹線の観察と研究を10年以上続けている。

主な著書に「廃線跡巡りのすすめ」、「アニメと鉄道ビジネス」(ともに交通新聞社新書)、「東北新幹線沿線の不思議と謎」(実業之日本社)、「東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!」(東洋経済新報社)ほか。

  • トレたび編集室/編
  • 写真/交通新聞クリエイト
  • 掲載されているデータは2022年9月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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