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　人通りの多い銀座で、堂々と行われた強盗事件。事件から数日が経ち、詳細が徐々に明らかになってきました。専門家は、実行犯の少年ら４人には主体性がなく、言動が稚拙だと指摘します。少年らは闇バイトで集められたとみられ、その危険性の懸念も…元埼玉県警・捜査１課、佐々木成三氏が解説します。

主体性のない犯行「指示された内容を従順にやっているだけ」

　９日午後６時ごろ、東京・銀座で起きた仮面男による強盗事件。人通りの多い中で堂々と行われたことに加え、逮捕されたのが高校生を含む10代の少年ら４人だったことで、日本中に衝撃が走りました。犯行時間は２分ほどで、犯行中に実行犯の１人が「まだ大丈夫、あと30秒はいける」などと発言していたといいます。

Q.この「30秒」は、どこから出てきた時間なのでしょうか？
(元埼玉県警・捜査１課　佐々木成三氏)
「これは、指示役から受けた指示だと思います。犯行時に撮られた動画を見ると、今回の被害店舗では防犯システムが作動しているので、警備会社と契約していると思われます。防犯システムが作動してから警備員が到着するまで、5～10分程度だという情報は流れていますので、犯行時間は『大体５分以内を目安に犯行をしてこい。その時間内に、できるだけ多くの時計を取ってこい』という指示があったのかもしれません」

Q. 犯行中、犯人らは外や周りを気にする様子がありませんよね。逃走時もマンションによじ登ったりと、稚拙にみえるのですが…
(佐々木氏)
「この容疑者グループには、犯行の主体性がないのは明らかです。例えば、犯行時間は２分という指示は受けたとして、普通なら、まず考えるのは『捕まらないこと』です。ですが、目撃者が大勢いる中で２分間犯行を続けたということは、『２分と指示されたが早く出る』という判断ができていない。本当に指示役から指示された内容、例えば『多くの腕時計を取ってこい』や『２分間でやってこい』などを従順にやっているだけのようにみえます」

　また、逮捕された少年ら４人は、お互いについて「知っている人はいない」と供述しています。犯罪心理学者の出口保行氏によると、「お互いが顔見知りではないことは、犯行に加担するハードルを下げる。匿名性の高さは犯行を後押しする」ということです。

Q.「顔見知りではない」と供述しているということですが、今回は全員の年齢が近く、横浜市に在住という共通点がありますよね？
(佐々木氏)
「今まで起きた事件の闇バイトで集まったとされる実行犯は、全国各地から集まってきたイメージが強いです。しかし今回は、逮捕された全員が横浜市在住ということで、何か仕組みがありそうな印象はあります。SNSで募った４人が、たまたま横浜市在住という偶然があるとは思えません。特定のサイトなどを使って集めた可能性はあります」

続発する強盗事件、背景にロレックスの価格高騰

　実は、都内では最近「高級時計強盗事件」が相次いでいます。３月には上野の宝石店が狙われ、午後2時20分という白昼堂々の強盗で、犯行時間は約１分。また４月にも、ブランド品買取店が襲われ、時計数点などが奪われました。その背景には、「ロレックス」の価格高騰もあるといいます。

　貴金属などの買取業者「買取むすび」によると、「コスモグラフ・デイトナ」というモデルが、2019年から現在にかけて50万円以上値上がりしているといいます。また、2022年の買い取り相場が140万円だったのに対し、2023年には440万円という最高買取価格を記録しました。

闇バイトに手を出す若者たち「危険性を訴える声が届いていない」

　現在、問い合わせが殺到しているという、警備会社セコムの最新防犯システム「フォギープロテクション」。これは、天井に取り付けた機器が異常を感知し、破裂音と天井からの白煙噴射で犯行を抑止するという、威嚇・視界遮断用の装置です。異常が発生すると、機器から異常信号がセコムに送信され、白煙噴射などで犯人の視界を遮断、その間にセコムが警察に通報する流れだといいます。

Q.警察が現場に急行するための時間稼ぎだったり、犯行をそれ以上広げないために視界を奪うというようなシステムですか？
(佐々木氏)
「そうなのですが、この装置は実は閉店時の防犯システムで、開店時のためのものではありません。どの店も、閉店時の防犯システムはかなりセキュリティを上げていますが、開店時の防犯システムは、何かプラスアルファが必要な時代になってきたなと感じています」

Q.ガラスケースが割られた瞬間に白煙が出る装置や、絶対に割れないガラスにするなどの自衛が必要になってくるということですか？
(佐々木氏)
「今回プラスになったのが、防犯システムが作動してブザーが鳴ったことで、周囲に異常を伝えることができました。そのことで多くの人が立ち止まり、多くの動画が撮影されました。防犯システムが有効活用された例だと思います」

　しかし、最も重要なのは、こういった事件が起きないことです。“闇バイト”に手を出す前に、「変に高額のバイト」や「内容が知らされない金儲け」などの話を見たり聞いたりした時は、相談することが大切です。下記の相談ダイヤルで受け付けています。

・警察相談ダイヤル　＃9110
・匿名通報ダイヤル　0120-924-839（平日・午前10時～午後5時）

Q.今回の事件では、複数の10代の少年が逮捕されました。闇バイトに手を出すと、ただの“捨て駒”として使い捨てられ、自分たちには何の得もなく一生を棒に振ってしまうということを、改めて認知しなければいけませんね。
(佐々木氏)
「メディアがこれだけ『“闇バイト”は危険だ』『ハイリスク・ノーリターンで全く得るものがない』『人生に大ダメージを与える』と伝えているにも関わらず、その声が届いていない若者たちが闇バイトに申し込んでしまいます。闇バイトの仕組みを止めないと、今回のような強盗事件は今後も発生すると懸念しています」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年5月10日放送)