オープニングタイトル
わたしには、とくべつなかよしなともだちがいる。でも前はちっともすきじゃなかったんだ。そんなきもちはかくしていたけどね。わたしのせきははじっこで、うしろのせきにしっこさんがいる。ほんとは「きくちまりか」なんだけど、おしっこもらしてばっかりいるから「しっこ」ってなまえにされちゃった。でもわたしは「きくちさん」ってよぶ。ときどきこころの中で『しっこ』ってよぶけど…。こころの中でいうのはだれにもきこえないからね。〔語り:平野綾(ひらの・あや)さん〕
しっこさんはすこししかしゃべらない。いつもおこったみたいなかおをしてる。しっこさんはときどきわたしのじゃまをする。「あっちにのってよ。」「わたしこれがいいんだもん。」わたしはさっとブランコにすわってやった。そしたらしっこさんもむりやりすわってきた。「いたいよー」「きついよー」えーん。えーん。わるくちがからだじゅうであばれまわった。『しっこのしっこたれ うんこたれ ぶたぶたのぶう おにばばのはなくそ』。
たいいくでころんだ。ほけんしつにいったらしっこさんがいた。「あらま、おなじところをけがしてなかよしね。」ほけんのせんせいがわらった。『べーっだ!』こころの中でいったら、しっこさんの目がつりあがった。わたしはむねがどきっとした。よこをむいてごまかした。
きんぎょがしんだ。まことのばかがぎゅうにゅうをいれてしなせた。「ごめんなさい、もうしません。」まことがあやまったら、しっこさんはいった。「ごめんですめばけいさつはいらないよ。」せんせいはしっこさんをしかったけど、わたしはなるほどね、とかんしんした。
しっこさんときんぎょのおはかをつくった。しっこさんがいった。「まことのあたまを百かいたたいて、たんこぶだらけにしてやりたい。」わたしもいった。「おへそにくうきいれをつっこんで、ぷーぷーふくらまして、アメリカまでとばしてやりたい。」しっこさんがわらった。わたしもわらった。空を見たら、ひこうきぐもがすーっとまっすぐのびていった。かえりみち、石をけってあるいていたら、「おーい」と、こえがした。見ると、ちいさなしっこさんが手をふっていた。「おーい」「おーい」「あしたねー」「うん、あしたねー」「ばいばーい」「ばいばーい」
つぎの日、目がさめたらねつがでていた。わたしはないてがっこうにいくといったけど、おかあさんに「だめ」といわれた。ゆうがた、れんらくちょうがポストにはいっていた。しっこさんだった。『かさまつゆいこだいじょぶですか なんでかぜひいたですか ぶよきなおしてはやくがっこにおいでください。きくちまりかはつまらないですよ。。。きゅうしくのぴいなつくりむあげます さようならきくちまりか。』
うたをうたってるとき、おしっこがしたくなった。もうちょっともうちょっと、とがまんをしてうたっていたけど、足ぶみをしたとき、おしっこがでてしまった。くつしたがぬれてく…。うわばきもぬれてく…。わたしは下をむいた。どうしよう。どうしよう。ザーッとうしろでおとがして、わたしの水たまりがながされた。ふりむくと、しっこさんが、かびんをさかさまにもってたっていた。しっこさんはせんせいがおこってもだまっていた。ろうかにだされてもだまっていた。
かえりのかいのあいだじゅう、わたしはこころの中でいっていた。『きくちさん、ごめんね。まりかちゃん、ごめんね。しっこさんなんてもういわない。』わたしはわるい。わたしがわるい。まりかちゃんがゆるしてくれるまで、わたしは百まんかいでも五百まんかいでもずっとあやまる。「まりかちゃん、ごめんね」…。「うん」