新刊文庫『みすゞと雅輔(がすけ)』 松本侑子著、新潮文庫、900円+税、2020年発行

     

金子みすゞと上山雅輔のふるさと・仙崎全景、山口県

『みすゞと雅輔』収録写真、松本侑子撮影

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 新発見!実弟・雅(が)輔(すけ)の日記から描く、詩人・金子みすゞ初の伝記小説。関連写真7点、地図2点を収載


●みすゞと雅輔について

金子みすゞ(1903-1930)
大正から昭和初期の詩人。山口県生まれ。

下関で書店員をしていた20歳で詩作を始め、雑誌「童話」「赤い鳥」などの投稿詩人となる。
豊かな想像力を西條八十に認められるも、生前に詩集はなく、500作をこえる作品を遺して自殺。
代表作に「大漁」「私と小鳥と鈴と」「こだまでしょうか」「明るい方へ」など。

上山雅輔(かみやま・がすけ)(1905-1989)
みすゞの実弟。
 
雅輔は、2歳のとき、金子家から上山家へ養子に出て、
みすゞを姉と知らずに文学の友となる。

みすゞの結婚後は、上京。

戦前は、菊池寛が創業した文藝春秋社で働き、
戦中は、昭和の喜劇王・古川ロッパ一座の脚本家に。
戦後は、劇団若草を設立、
和泉雅子、島田陽子、石橋蓮司など、大勢の人気俳優を子役から指導

平成元年に84歳で逝去。

平成26年(2014年)、雅輔の未公開の日記 89冊が、四国で発見される。
松本侑子は、その直筆資料を3年がかりで読解
金子みすゞの知られざる真実と詩作への情熱を描く、画期的伝記小説『みすゞと雅輔』
 
   
みすゞが自死した昭和5年頃の雅輔、24歳前後

写真は、雅輔の妻の実家所蔵。無断転載厳禁





●新潮文庫『みすゞと雅輔』カバーより

「みんなちがって、みんないい。」
小さな命の輝きを詠った金子みすゞ。

弟の雅輔(がすけ)は幼くして養子に出され、
みすゞを姉と知らずに文学の友となる。

新発見の雅輔の日記から浮かび上がる
二人の文芸への情熱、
青春の光と影、
愛と嫉妬、
みすゞの自死、
永遠の別れ。
大正デモクラシーに生まれた童謡詩が、
戦争にむかう昭和に衰退する時代背景を描きながら、
知られざるみすゞ像に迫る、画期的伝記小説。

●文庫解説より
金子みすゞその人についての研究はほとんど進んでいない。
……ところが、二○一四年、みすゞの実弟である上山雅輔の直筆資料が発見された。
それは二人の交遊を語る貴重な内容で、日記、回想録、学生時代のノートなど膨大なものであった。
松本侑子氏はこれを数年にわたってたんねんに読解し、あらたな金子みすゞ像を描き出すことに成功した。
解説・片山宏行



●書評
 2017年刊の単行本『みすゞと雅輔』は、40の媒体で紹介されました! 記事の抜粋

★「新たに発見された弟正祐(まさすけ)(後の雅(が)輔(すけ))の未公開資料などを駆使して、みすゞを恋人のように慕い、様々に影響を与えあった弟との屈折した交流が、童謡文学昂揚期から戦争に向かう時代を背景に克明に描き出され、既存のみすゞ像にも貴重な一石を投ずる衝撃的な作品である。」
書評家・野上暁氏「波」2017年3月号


★「金子みすゞ伝説は、今後急速に修正されてゆくだろう。」
「みすゞの自殺を適切に説明した本が、ようやく現れた」
広島大学教授・西原大輔氏「週刊読書人」2017年4月14日号


★「金子みすゞには、夭折した薄倖の女性詩人のイメージがつきまとってきた。そんなお決まりのみすゞ像を塗り替えるだろう発見が、松本侑子さんの伝記小説『みすゞと雅輔』には詰まっている。」
書評家・三浦天紗子氏「anan」2017年5月31日号


★「人物の心理や置かれた環境、歴史的背景を織りなすように描いていく」「かつての幸せな日本人の姿を描いた物語」
歴史学者・山内昌之氏「文藝春秋」2017年6月号、書評鼎談


★「本書に描かれた世界が私の中学・高校時代にそっくりだった」
「登場人物も懐かしかった。中山晋平、西条八十、北原白秋、そして古川ロッパ」
ノンフィクション作家・柳田邦男氏「文藝春秋」2017年6月号、書評鼎談


★「従来よりも仔細かつ膨らみのあるみすゞ像」
「大正~昭和期の文化史としても面白く読めます。」
「姉と弟の二人で大きな歴史の筋書きが描けている」
「『地方で埋もれていく才女』と『都会で一応活躍している男』。この対比は見事」
政治学者・片山杜秀氏「文藝春秋」2017年6月号、書評鼎談

 

 
単行本『みすゞと雅輔』新潮社、2017年年発行


●目次

序章    電報

第一章   「カチューシャの唄」   中山晋平

第二章   「赤い鳥」         鈴木三重吉

第三章   「かなりあ」        西條八十

第四章   「片恋」          北原白秋

第五章   「金の鈴」        上山正祐

第六章   「芝居小屋」       金子みすゞ

第七章    関東大震災

第八章   「大漁」          金子みすゞ

第九章   「沼」           島田忠夫

第十章   結婚

第十一章 『ジャン・クリストフ』  ロマン・ロラン

第十二章  芸妓花千代

第十三章 「映画時代」       古川緑波

第十四章 『東京行進曲』     菊池寛

第十五章 「鯨法会」        金子みすゞ

第十六章 『復活』         トルストイ

終章   朝日丸

 主要参考文献・謝辞

 解説 美しい双曲線 片山宏行



●『みすゞと雅輔』は、大正から昭和の詩歌を50作以上掲載

●みすゞが雑誌「童話」懸賞欄に投稿した詩

大漁   金子みすゞ

 朝焼小焼だ
 大漁だ
 大(おお)羽(ば)鰮(いわし)の大漁だ。

 浜は祭りの
 ようだけど
 海のなかでは
 何万の
 鰮(いわし)のとむらい
 するだろう。

  「童話」大正13年3月号  『みすゞと雅輔』169ページ


●みすゞが師事した西條八十の詩

海にて 西條八十

 星を数うれば七つ
 金の燈台は九つ、
 岩蔭に白き牡蠣(かき)かぎりなく
 生るれど、
 わが恋はひとつにして
 寂し。

  第一詩集『砂金』大正8年  『みすゞと雅輔』178ページ』


●雑誌「童話」の懸賞欄で、みすゞと順位を競った島田忠夫の詩

沼  島田忠夫

 行々子(よしきり)
 葦(あし)のかげ
 沼の日ざかり
 ものうとさ
 小鮒(こぶな)が菱(ひし)を
 つヽく音
 岸の畠(はたけ)の
 青い梨

 葦をこえて
 舟がきて
 ぼくは釣竿
 あげました

 どんより光る
 沼のうえ
 一面風おと
 葦のなか

  「童話」大正14年10月号  『みすゞと雅輔』221ページ


●昭和5年に自殺したみすゞが遺した手帳に書かれていた詩の一篇

鯨(くじら)法(ほう)会(え)  金子みすゞ

 鯨法会は春のくれ、
 海に飛魚採(と)れるころ。

 浜のお寺で鳴る鐘が、
 ゆれて水面(みのも)をわたるとき、

 村の漁夫(りようし)が羽織着て、
 浜のお寺へいそぐとき、

 沖で鯨の子がひとり、
 その鳴る鐘をききながら、

 死んだ父さま、母さまを、
 こいし、こいしと泣いてます。

 海のおもてを、鐘の音は、
 海のどこまで、ひびくやら。

   『みすゞと雅輔』464ページ


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小説『みすゞと雅輔』に使用した上山雅輔の日記 大正時代から平成元年元年まで







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知られざる詩人・金子みすゞの文芸小説『みすゞと雅輔』松本侑子著、新潮文庫、900円+税


松本侑子ホームページ

松本侑子(作家・翻訳家)
1987年、『巨食症の明けない夜明け』(集英社文庫)で、第11回すばる文学賞受賞
2009年、『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(光文社文庫)で、第29回新田次郎文学賞受賞
2019年から、日本初の全文訳・訳註付『赤毛のアン』シリーズ全8巻(文春文庫)、刊行中