GLIM SPANKYインタビュー|“全曲主役級”の7thアルバムで打ち出した力強いメッセージ (2/2)

「どう生きるか」という松尾からの問いかけ

──アルバムの冒頭の「The Goldmine」では「金脈を見つけるのは自分次第」というメッセージが打ち出されていますね。

松尾 そうですね。やはりこういう気持ちは最近の自分のテーマかもしれないです。落ち込んでしまうこともよくありますが、行動する意志があれば跳ね返せる。生きてる限りみんなの中に“金脈”があって、絶対に枯れることはないと思うんです。自分の中の金脈を見つけて強く進んでいきたいと自分は思っているので「The Goldmine」というアルバムタイトルにしましたし、そのタイトルを決めてから1曲目の「The Goldmine」を書きました。

松尾レミ(Vo, G)

松尾レミ(Vo, G)

亀本 全部がアルバムタイトルありきでしたね。それによって1曲目のサウンド感が決まっていって。タイアップ曲が多かったので、どうやって1枚のアルバムにしようかなと考えたときに、全部を締める帯になるような曲が必要だなと思ったんです。「The Goldmine」はタイトルに引っ張られて書いた曲です。

松尾 あと、最後に「怒りをくれよ」のjon-YAKITORYさんのリミックスバージョンが入っていますが、「怒りをくれよ」は「ONE PIECE FILM GOLD」の主題歌だったので、そこもゴールドつながりです(笑)。

──(笑)。確かにそうですよね。「The Goldmine」はダイナミックなロックですが、この曲はベースもプログラミングも亀本さんが担当してます。

亀本 そうですね。だから僕しか演奏してないですね。僕はImagine Dragonsがすごく好きなんですけど、Imagine Dragonsもかなり生音っぽい精密な打ち込みで曲を作っていて、近年はああいうサウンドを目指していますね。必要な場所に必要な音をピンポイントで入れていく感覚。「The Goldmine」はロックバンド的な楽曲だけど、手法を変えることで新鮮みを生み出したかったので、そういうアプローチにしました。

──歌詞もサウンドも時代がビビッドに映し出されていると思うんですが、そういうものであるべきだという気持ちは増していますか?

亀本 20代の頃は身の回りのことがすべてだった気がするんですが、歳を重ねて視野が広がってきたところがあって。その一方で、身の回りしか見えていないからこそ表現できる音楽もあると思うので、純粋な子供の頃の気持ちもちゃんと持ってなきゃいけないなとも思います。だから、「ミュージシャンって難しいな」と思いながら日々生きてる(笑)。

亀本寛貴(G)

亀本寛貴(G)

松尾 そっか、私はどんどん生きづらくなってる(笑)。

亀本 なんでだよ?(笑) どういうところが?

松尾 いろいろだよ……。でも、生きづらさを曲に押し込んで、自分を奮い立たせてくれる曲を書きたいなと思ってる。そうすればきっと、自分と同じように生きづらさを感じながらがんばってる人を応援できるかもしれない……だから、「ミュージシャンをやっててよかったな」と。今の自分や時代を反映したアルバムを作れたと思いますね。

──生きづらさと葛藤しながらも、「どう生きるか」という力強いメッセージを生んでいるのが松尾さんならではだと思うのですが。

松尾 ありがとうございます。悩んでいることにただただ共感してくれる音楽もいいと思うんですが、私としては物足りなく感じちゃうんですよ。音楽だけじゃなく、本に対してもそう思うかもしれない。解決策が欲しいんですよね。一筋の光かもしれないけれど、少しでも解決の糸口になるような部分は描きたいと思っています。

リミックスを聴いて「めっちゃ速いじゃん!」

──アルバムには「怒りをくれよ(jon-YAKITORY Remix)」も入っています。GLIM SPANKYにとって初のリミックス音源となりますが、どういう経緯で収録することになったんですか?(参照:GLIM SPANKY「ワンピース」主題歌をjon-YAKITORYがリミックス

亀本 「怒りをくれよ」は僕たちの曲の中で一番人気がある曲なんです。リリースから7年くらい経ったこともあって、レーベルスタッフから「リミックス音源を入れたらどうか」という話をいただいて、どういう人に声をかけたらいいかを話をしている中で、もともとjon-YAKITORYくんが手がけた曲が好きだったのでオファーさせてもらいました。それで、一緒に食事したりする中でやりとりしていって。

松尾 リミックスをやってもらうなら音楽のルーツや考え方に共通点があって、友達になれる人がいいなと思ってました。それで、制作が始まる前にjon-YAKITORYさんとたくさんお話ししたらすごく意気投合したんですよね。それで「やりたい」と言っていただいて、何度かやりとりしながら作っていきました。GLIM SPANKYの曲をリミックスしてもらうのは初だったんですけど、ディレクターさんがアイデアをくれて、亀本が「YAKITORYさんどう?」と提案してくれたから実現したと思っています。この曲でもGLIM SPANKYの新しい扉を開けられた感じがします。

亀本 サブスクで曲を聴く時代になって、最近出した曲も昔出した曲も、リリース時期を問わず聴いてくれるリスナーが多いと思うんですよね。昔出したデビュー曲がいきなりヒットするかもしれないし、そういう意味でも「怒りをくれよ」をリミックスっていう形でもう1回発信するのはいいんじゃないかと思いました。海外ではリミックスは当たり前のことなので、僕らもやってみたいなと。リスペクトをしている人と実現できたのでとても有意義でしたね。

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

──何度かやりとりがあったということですが、何かリクエストはしたんですか?

亀本 けっこうしましたね。それでいろいろなパターンを作っていただきました。YAKITORYくんは音楽的にすごく器用なので、いろいろ作っていただいた中で組み合わせてもらったりして、楽曲としてきれいに盛り上がりの波が成立するように着地しました。

──結果的にBPMがずいぶん高くなってますよね。

松尾 「めっちゃ速いじゃん!」と思って笑いました(笑)。

亀本 (笑)。でも今の洋楽アーティストって、当たり前のように速いバージョンを出したりしますよね。なので、違和感はなかったです。

──アートワークの構図が、オリジナルバージョンが収められているアルバム「Next One」(2016年7月発売)と同じで、リリックビデオには過去のライブ映像が使われていますね。

亀本 ディレクターが「せっかく過去の曲のリミックスを出すんだったら、ジャケットは過去の構図で作ってみたらどうでしょうか」と提案してくれて。ビデオもそうですが、昔からのファンの方にも楽しんでもらえるので、よかったなと思います。

松尾 楽しかったよね。SNSに、20歳になったときに赤ちゃんだった頃の家族写真と同じ構図で撮った写真が投稿されてたりするじゃないですか。リリースから何十年も経ってるわけではないけれど、そういう楽しみ方ができるのは面白いなと思いました。

GLIM SPANKY「怒りをくれよ(jon-YAKITORY Remix)」ジャケット

GLIM SPANKY「怒りをくれよ(jon-YAKITORY Remix)」ジャケット

GLIM SPANKY「Next One」通常盤ジャケット

GLIM SPANKY「Next One」通常盤ジャケット

亀本 「怒りをくれよ」はずっとライブでやってきた曲ですし、ファンの人たちの中には100回以上聴いてる人もいるかもしれないけど、そういう楽曲が新たな形で生まれ変わって喜んでくれる人も多いんじゃないかなと思いました。

松尾 「Next One」からの自分たちの歴史を感じましたね。いろんな人に聴いてもらえたという事実を強く噛みしめられる機会でした。

松尾の部屋で生まれた

──アルバムの真ん中あたりに収録されている松尾さん作編曲の「真昼の幽霊(Interlude)」と「Summer Letter」がシームレスにつながる流れは、アルバムならではですよね。

松尾 ありがとうございます。そこはこだわりました。「真昼の幽霊(Interlude)」は部屋で作ったデモ音源なんですけど、その空気感がよかったのでそのまま入れちゃいました。

亀本 まさにアルバムだからできる流れですし、松尾さんの感性がすごく生きてる2曲なので、すごくいいと思いました。最初、「真昼の幽霊(Interlude)」をオープニングにするアイデアがあって「それもいいな」と思ったんですが、その後「The Goldmine」というけっこうパンチのある曲ができたのでド頭に入れました。あと、今回のアルバムに入っている曲は全部イントロが超短いんですよ。今はイントロをスキップして聴く人が多いし、自分の昔の曲を聴くと、イントロが長くて聴いてられないんですよね(笑)。それもあって、今回はかなり歌が早く入ってくる構成にしました。だから、オープニングで1、2分のSEがあったらみんな我慢できなくなっちゃうかなと思い、頭から勢いを付けたくて「The Goldmine」を1曲目にしたというのもあります。曲のフォーマットは時代によってどんどん移り変わっていきますよね。「怒りをくれよ」はオリジナルはAメロから始まるけど、YAKITORYくんのリミックスはいきなりサビから。音楽の聴き方によって楽曲自体も変化していく。僕は残っていく音楽は時代観が強い音楽だと思っているので、“今の時代の音楽”ということは常に意識しています。

すごくエネルギーが沸いている

──11月30日にスタートする「The Goldmine Tour 2024」はどんなツアーになりそうですか?

松尾 しばらくライブを休んでいた時期があったので、すごくエネルギーが沸いていて楽しみですね。あと、これだけの本数をやるのがひさしぶりですし、あまり行けていなかった街でもライブできるのがうれしくて。昔の曲から「The Goldmine」の曲まで、幅広いGLIM SPANKYの楽曲を伝えていきたいですね。ゼロからのスタートっていう気持ちでいます。

亀本 「コロナ禍が終わっていくだろうな」という意識のもとで作ったアルバムということもあり、ライブがすごく盛り上がると思うんですよね。そういう自信もありますし、ライブを通じて進化していくアルバムだと思うので、しっかり準備をしていきたいです。あと、いろいろなところに行くので、車移動も楽しみです。みんなで音楽をかけて「この曲カッコよくない?」とか言い合いながら旅をするのがツアーの楽しみでもありますから。

松尾 そうだよね、好きな曲かけてね。最近改めて思ったんですが、GLIM SPANKYは関わってくださってるスタッフの方も含めたチームで、ライブもアルバムも作られているなって。そういう感謝の気持ちも込めたうえで、思い切り発散するツアーにしたいと思ってます。

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

ライブ情報

The Goldmine Tour 2024

  • 2023年11月30日(木)東京都 LIQUIDROOM ※「The Goldmine Release Party」
  • 2024年1月20日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
  • 2024年1月27日(土)高知県 X-pt.
  • 2024年1月28日(日)愛媛県 松山サロンキティ
  • 2024年1月30日(火)香川県 DIME
  • 2024年2月1日(木)滋賀県 滋賀U★STONE
  • 2024年2月3日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2024年2月4日(日)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2024年2月6日(火)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2024年2月9日(金)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2024年2月10日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2024年2月15日(木)鳥取県 米子AZTiC laughs
  • 2024年2月17日(土)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2024年2月18日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年2月20日(火)京都府 磔磔
  • 2024年2月24日(土)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2024年2月25日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2024年3月1日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年3月3日(日)宮城県 Rensa
  • 2024年3月8日(金)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2024年3月10日(日)愛知県 名古屋市公会堂 大ホール
  • 2024年3月20日(水・祝)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2024年3月24日(日)東京都 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
  • 2024年3月30日(土)長野県 長野市芸術館 メインホール

プロフィール

GLIM SPANKY(グリムスパンキー)

松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成された。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「MOVE OVER」が使われ、その歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリースした。2018年1月に映画「不能犯」の主題歌をリードトラックとするシングル「愚か者たち」を発表し、5月には初の東京・日本武道館でのワンマンライブを開催。最新アルバムは2023年11月1リリースの「The Goldmine」。同月から2024年3月にかけてライブツアー「The Goldmine Tour 2024」を行う。