翡翠(ひすい)/ジェダイトとは?特徴や価値、歴史から魅力を徹底解説

美しい緑色が印象的な宝石、翡翠(ひすい)。日本でも古くから親しまれている宝石のひとつで本来は「翡翠輝石」、英語では「ジェダイト」とも呼ばれています。

翡翠は太古の昔から中国や日本、マヤなどの東洋において、生命力をつかさどる命の石として大切にされてきました。日本でも採ることができ、新潟県糸魚川からは約5000年前の縄文時代に作られた翡翠の勾玉が出土しています。

この記事ではそんな日本人にもなじみ深く、長い歴史を持つ翡翠について詳しくご紹介します。20年以上天然石の卸売に携わる宝石のプロTOP STONEが、特徴から歴史まで丁寧に解説していきます。ぜひ一緒に翡翠の魅力を紐といていきましょう。



1.宝石・ルースとしての翡翠(ひすい)/ジェダイト

まずは翡翠(ひすい)/ジェダイトの品質や特徴など、基本的な情報をご紹介します。淡い緑色の宝石のイメージがありますが、いったいどのような宝石なのでしょうか。詳しく解説していきます。

■高品質な翡翠(ひすい)/ジェダイトとは

翡翠の品質は鉱物の種類やカラー、透明度などによって異なります。また、人工処理を施されることがあり、処理の方法や種類によっても価値が変わります。

翡翠の種類

英語で「jade(ジェード)」、中国語で「玉(ぎょく)」と呼ばれる翡翠には、硬玉の「ジェダイト」と軟玉の「ネフライト」の二種類があります。ジェードは緑色をした艶があり少しとろみのある質感の石の総称で、ジェードもジェダイトも「翡翠」と訳されるため、混同しやすいです。

ジェダイト 鉱物名は翡翠輝石。輝石グループの鉱物。ジェードのなかで硬度が高い「硬玉」を指します。「ネフライト」と区別するために便宜上「本翡翠」と呼ばれることもあります。
ネフライト 角閃石グループの鉱物。ジェードのなかで硬度が低い「軟玉」を指します。見た目は「ジェダイト」と似ていますが、まったく別の鉱物です。

ジェダイトとネフライトはもともと同じ鉱物だと考えられていましたが、1900年代に科学的に鑑別できるようになってから別の鉱物であることがわかりました。

中国から日本にさまざまな宝石が輸入されるようになり、ジェダイトとネフライトの違いを表すために「硬玉」「軟玉」という言葉が作られました。それでも、両者は一括りで扱われていたため「翡翠」と表すしかなかったのです。

「翡翠」という言葉が生まれた中国ではネフライトしか産出せず、ネフライトを翡翠と呼ぶため混同しやすいでしょう。

しかし宝石品質の翡翠はジェダイトのみで、日本における翡翠は一般的にはジェダイトのことです。そのため翡翠は鑑別上「翡翠輝石/ジェダイト」であることが必須条件です。この記事でも翡翠=ジェダイトとして解説していきます。

カラー

一般的に翡翠は緑色のイメージが強いでしょう。しかし、純粋なものは無色です。そこに金属イオンが含まれることにより、緑、青、赤、黄、オレンジ、紫、黒などさまざまな色合いを呈します。

もっとも人気があり価値が高いのは緑色です。なかでも鮮やかな緑色で色ムラがなく、透明度の高い翡翠は「琅玕(ろうかん)」と呼ばれます。とろみのあるツヤとなめらかな質感が琅玕の特徴です。琅玕はきわめて希少で最高品質として高く評価されます。英語では「インペリアル・ジェード」と呼ばれ、海外でも人気です。

緑色以外にはやわらかな紫色の「ラベンダー翡翠」や、無色透明の「アイス・氷翡翠」と呼ばれる翡翠も希少で人気があります。

透明度

品質の高い翡翠は透明度が高く、内部にインクルージョン(内包物)や傷が少ないものが望ましいとされています。透明度が高いほど美しさが際立ち、価値が高まります。

紫色や無色など淡い色の翡翠は透明感のあるものが多い一方、緑色で透明度の高い翡翠は大変希少です。そのため緑色で美しく透き通った翡翠には、非常に高い価値があります。

加工処理のランク

翡翠は人工処理の有無や種類によってランクがつけられます。


    A貨(Aジェード)

    人工処理を施していない、あるいはツヤ出しのためのワックス加工のみを施した天然の翡翠。宝石としての価値があるのはA貨だけです。


    B貨(Bジェード)

    透明度を出すための漂白処理や、鮮やかな色にするための樹脂含侵処理を施した翡翠。


    C貨(Cジェード)

    透明度を出すための漂白処理や、天然に似せた色の染色加工を施した翡翠。

■翡翠(ひすい)/ジェダイトの輝き

翡翠はオリエンタルな緑色の色合いと美しい光沢が人気の宝石です。ダイヤモンドやルビーのような華やかな輝きこそないものの、上品なツヤとなめらかな質感からは奥ゆかしさを感じられるでしょう。

特に最高品質の琅玕には、油をたらしたようなとろみのあるツヤと質感があり、独特の美しさが魅力です。

■翡翠(ひすい)/ジェダイトの魅力

翡翠は身につければ身につけるほど美しくなる「色が育つ宝石」といわれています。なぜなら、翡翠には肌の油分によってツヤを増す特徴があるからです。

ほとんどの宝石は汗や皮脂に弱く、油分が表面に付着すると外観を損なってしまうおそれがあります。ところが、翡翠にとっては逆なのです。乾燥に弱い翡翠には適度な油分が必要で、身につけたり触れたりする機会が多いほどツヤと透明感が増し、色が美しく見えます。

身につけるほど美しくなるので愛着がわき、長く大切にしたくなる宝石なのです。

■翡翠(ひすい)/ジェダイトの産地

翡翠(ジェダイト)はミャンマーや日本、アメリカ、ロシア、南米、ヨーロッパ、トルコなど、世界のいくつかの地域で産出されます。ただし、非常に特殊な環境でしか形成されないため、産地は限られています。なかでもミャンマー、グアテマラ、日本などが有名な産地です。

ミャンマー産の翡翠

ミャンマーは世界的にもっとも有名な翡翠の産地で、高品質な翡翠が多く産出されます。ミャンマー産の翡翠には色鮮やかで透明度が高いものが多く、最高品質の琅玕(ろうかん)が見つかることもあります。

また、ミャンマーの翡翠には土の中から採掘されるものと川の中から採掘されるものがあります。土の中から見つかる原石は、表面が鉄分の多い皮肌(スキン)に覆われているものが多いのが特徴です。川の中から見つかるものには表面の層が形成されず、比較的良質なものが多いようです。

グアテマラ産の翡翠

グアテマラは中米に位置する翡翠の主要な産地のひとつです。グアテマラでは一般的な緑色のほか、紫色や水色、黄緑色などさまざまな色の希少な翡翠が採掘されます。

日本産の翡翠

日本にも翡翠の産地が10か所ほどあります。特に品質が高いものは、新潟県糸魚川周辺で採掘されます。

ミャンマーに比べれば産出量こそ少ないものの、緻密で透明度が高い翡翠が見つかっています。また、原石の表面が厚いスキンに覆われていないことがミャンマー産とは異なる特徴です。

糸魚川では約5000年前の縄文時代から、翡翠を大珠や勾玉などの装飾品に加工して交易していたとされ、日本は世界最古の翡翠文化発祥地といわれています。

2.鉱物・原石としての翡翠(ひすい)/ジェダイト

翡翠(ひすい)/ジェダイトの原石にはさまざまな形状や模様のものがあり、原石ならではの魅力があります。ここでは鉱物としての翡翠について詳しくご紹介します。

■組成について

英名 Jadeite(ジェダイト) 
和名 翡翠輝石(ひすいきせき)
成分 NaAl[Si2O6]
結晶系 単斜晶系
モース硬度 6.5~7
比重 3.25~3.36
屈折率 1.65~1.66
劈開 良好
主な産地 ミャンマー、ロシア、カザフスタン、グアテマラ、アメリカ(カリフォルニア州)、トルコ、日本

翡翠(ジェダイト)は造山運動に伴う圧力と温度のもとで、蛇紋岩の中に形成される輝石グループの鉱物です。海洋プレート(岩盤)が大陸プレートにぶつかってその下にもぐり込んでいく「沈み込み帯」と呼ばれる場所で形成されます。日本列島も沈み込み帯のひとつです。

地中深くで生まれた微細な結晶が、約5億年の時間をかけてじっくりと圧力が加えられて誕生したのが、翡翠輝石という岩石です。

翡翠輝石がつくられる際に地殻変動などで結晶どうしにすきまが生まれ、その間に鉄分などの不純物が混入すると、結晶の緻密さに乱れが生じて透明度に影響を与えます。逆に、そのような事象のないものは素晴らしい透明度と緻密さを持ち、地上に表出したときに最上品質の翡翠として扱われるようになります。

翡翠がほかの宝石と比べて衝撃や日光、湿度、その他さまざまな外的要因に強いのは、地球のプレートの変動という膨大なエネルギーに耐えてできあがっている背景もあるのです。

翡翠の主成分はナトリウム、アルミニウム、ケイ素、酸素で、主成分だけの純粋な翡翠は

無色透明です。これに不純物として金属イオンが含まれることで、さまざまな色合いを表します。

一般的に翡翠の七色といわれる緑、青、赤、黄、オレンジ、紫、黒がありますが、実際にはそれ以上の豊富な色があります。純粋な翡翠にクロムと鉄が含まれると緑色に、鉄とチタンが含まれると青色に、チタンが含まれると紫色に見えます。2色以上の色が混ざり複雑で美しい色合いを見せることも。

モース硬度は6.5~7と非常に硬いわけではないものの、繊維が絡まったような結晶構造をしているため靭性(外部からの圧力に対する強度)が高く、衝撃に耐える力はダイヤモンドより強いといわれています。

■原石の形状

翡翠は蛇紋岩の岩塊の中で、1万気圧程度の圧力が集中してかかった場所に形成されます。肉眼では見えないほど小さな結晶が集まってできた緻密な岩塊を構成しています。

そのためさまざまな成分や別の鉱物が混ざり合って産出することが多い石です。よって形や色、模様、透明度なども原石によって多種多様です。

■原石コレクターからみた魅力

翡翠の原石は色合いや形、透明度などが石によってさまざまです。色ムラのない美しい形の宝石品質の翡翠も魅力的ですが、さまざまな色が混ざり合い複雑な形をした原石には、天然素材ならではのあたたかみがあります。

翡翠の原石を割ると、中は白や緑、紫などが混ざっているものがありますが、赤や黄色が見られることは非常に希少です。赤や黄色は外側からの鉄分の浸透や酸化が原因で発色するため、外皮(スキン)に近い部分からしか取れないためです。大きな塊があっても土中に鉄分が含まれなければ酸化が起こらないですし、もし酸化して赤や黄色が見られたとしても外皮部分は必然的に表面だけなので、ごくわずかになるのです。そのため赤や黄色の翡翠は大変希少です。

また、翡翠の原石には内部に個性的な模様や柄が見られることもあります。何色もの色が混ざってまだら模様になっているものや、層になっているものなど多種多様です。同じ翡翠でも原石は一つひとつ異なり、それぞれに独自の魅力があるためコレクションする楽しみがあります。

日本の翡翠の産地である新潟県糸魚川市内の海岸では、自分の手で翡翠の原石を探すこともできます。海岸で見つかる翡翠は糸魚川の山で生まれ、長い年月をかけて川を下り海に流れついたもの。そのため川の清流によって自然に磨かれ、原石のままでも美しいのが特徴です。

ただし、採取が禁止されている区域や決められたルールもあるため、翡翠探しに訪れる際には事前に必ずルールを確認するようにしてください。

■鉱物としての翡翠(ひすい)/ジェダイト

翡翠は小さな結晶の集合体であり、地下深くで形成されるため、しばしば希少な鉱物を伴って産出することがあります。これまでには翡翠を含む岩石の中から、青海石、糸魚川石、蓮華石、松原石などいくつかの新鉱物が発見されました。

しかしまだ解明されていない部分も多く、翡翠は地質学や考古学においても重要な役割を持っているのです。

3. 翡翠(ひすい)/ジェダイトをより楽しむために

翡翠は古くから日本でも親しまれているなじみ深い石です。ここでは翡翠の歴史的背景や新たな楽しみ方についてもご紹介します。翡翠の魅力をさらに掘り下げていきましょう。

■翡翠(ひすい)/ジェダイトの歴史

翡翠は太古の昔から護符や魔除けに使用され、東洋では「玉(ぎょく)」とも呼ばれ、珍重されてきました。

日本では約5000年前の縄文時代に作られた翡翠の勾玉が出土しており、これは世界最古の翡翠文化といわれています。翡翠の勾玉は権力や財力を表すほか、呪術や宗教上で神聖な石として扱われ、儀式やさまざまな用途に利用されていたようです。

海外でも翡翠は、その美しさから装飾品や調度品の材料とされてきました。また、不思議な力を持つ石として体を癒すために用いたり、呪術や儀式に使用したりもしていたようです。

中国では神や皇帝、時の権力者の象徴とされ、西太后をはじめ歴代の皇帝に愛されてきた歴史を持ちます。「翡翠」という名前は中国で生まれ、カワセミの美しい羽の色に似ていたことから「翡翠玉」と呼ばれるようになり、その名前が日本へと伝わったといわれています。

現在はその美しさと歴史的・文化的価値の高さなどから、日本の国石にも選定されています。

■翡翠(ひすい)/ジェダイトの加工

翡翠は古くから加工技術が完成されており、宝飾品や工芸品などに加工されて使われてきました。翡翠をカットしたり磨いたりすることで、独特の美しいツヤが生まれます。

また、ミャンマー産の原石の多くは、表面が変質した鉄分の多い皮肌(スキン)で覆われているため、内部の状態がわかりません。そこで表皮を直接削り落としたり、表皮の一部を溝状に凹ませて(ウィンドー window)、内部の色と状態を確認できるようにして取引されています。品質の高い翡翠であれば、表面を削ると美しい緑色や紫色が表れます。

■アクセサリーやパワーストーンとして

翡翠には「繁栄・長寿・幸福・安定」などの石言葉があります。古くから東洋を中心に護符や魔除けに使われ、大切にされてきました。

災いや不運、周囲のマイナスなエネルギーから身を守るとされ、翡翠のブレスレットやネックレスをお守りとして身につける人も多いようです。

5月の誕生石でもあり、5月が誕生日の方へのプレゼントとしても人気があります。

■翡翠(ひすい)/ジェダイトの断面・結晶

翡翠の原石の断面はまだら模様や縞模様、層になっているものなど、さまざまな模様が見られることがあります。

また、翡翠は小さな結晶の集合体でできているため、結晶自体に不純物成分が含まれていると、緑、青、赤、黄、オレンジ、紫、黒などさまざまな色合いを見せます。一口に翡翠といっても、非常に多種多様な色や形、模様が見られる個性的な石です。


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4. まとめ

古くから人々に親しまれ、大切にされてきた翡翠(ジェダイト)。日本の国石にも指定されている日本人になじみ深い宝石のひとつです。日本の宝石のルーツは翡翠にあるといってもよいでしょう。

ぜひこの機会に翡翠についての知識や理解を深め、翡翠をより身近に感じていただければうれしいです。

この記事を書いた人

ほしあゆみ

TOP STOneRY / 編集部ライター

トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。


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